地方で生きるということ-映画格差編
今日は『キックアス』を観てきました。また自分の感想記録を書こうと思うのですが、自分が読ませていただいているブログなどでは『キックアス』についての感想はもう12月いっぱいくらいでほぼ出尽くした感があります*1。『キックアス』は当初日本での配給会社が決まらず、上映すら危ぶまれていたのが、なんとか公開され、かつ各地の劇場もたくさん入ったらしいので、とてもよかったな、と思うのですが、自分は正直観るまでの“待ち”の状態が長すぎて少々くたびれた、という感じもありました、これは作品の質がどうとかいう問題とは全く別で。
いい映画は多少のネタバレというか、ストーリーの事前知識が入っても大丈夫と思ってはいるのですが、できればあまり事前に情報を入れずに映画を観られたらいいな、と思ってブログの感想も薄目で流し見したり、twitterのTLの盛り上がりも「あぁそうか東京では、公開されてるんだな」と遠い目で焦点をずらして見たり、そうこうしているうちに、事前の期待値が振り切れそうなほど上ったり･･･それで観るまでにちょっと気持ちのゴムが伸びちゃったような感じになることがあります。『キックアス』のような映画は自分がtwitterでフォローさせていただいてる方々の多くが観られているような映画で、その絶賛の感想などが連日流れてきて、ブログも続々更新されると、もうすでに観て楽しんだ人がいるのに、とちょっと寂しいというか、疎外感とはいいませんが、まぁ“地方感”を改めてしんしんと感じるというか。
“全国一斉ロードショー”と銘打たれCMもガンガン打たれる類の映画はシネコンの普及もあって、観るに困らないのですが、俗にいう“単館系”の映画の公式サイトをみると“全国順次公開”となっていて、あぁ･･･と。劇場リストを開くと下手すると自分の住んでいるところでは、かかる予定がなく、大阪遠征しなきゃかぁ、とか。もしくは予定リストにあがっていても、3〜4ヶ月先とか（4月公開予定とかいった、ざっくりした記載）、上映されても1週間限定、とか。
いや、もっと映画館まで遠くて、まして単館系を上映する映画館なんて普通にいける範囲内にないような“地方”もたくさんあると思うので、電車ですぐにいくつもの映画館にアクセスできる自分は恵まれてると思います。神戸にもミニシアターは存在するし*2、大阪もそんな遠い距離じゃない。それに、わかるのです。東京近郊での評判や感想でみかけた盛り上がりが嘘のように、客の入りがすくない現実を何度も目の当たりにしているから。あんなに話題になってたから混むかも、と行ったら整理番号一桁、とか、座席指定し放題でかつ全員で5人で鑑賞とか。“あんなに話題になった”のは自分が好んでいる映画を好きそうな人の集まる方面：クラスタ*3での話しであって、決してそれは“地方”における数に反映されるとは限らない。東京ほど人口やあらゆる業界（雑誌とかデザインとかメディアとか･･･諸々の文化的発信）の中心が集中していれば、いろんなアンテナがたくさんあって、『スプリング・フィーバー』『息もできない』に対して反応するようなアンテナを立てている人もたくさんいるでしょう。でも、地方の人口規模で、まして若年層の流出とかあったりしたら、どれだけのアンテナが反応する？絶対数が少ないわなー･･･そりゃ。それが地方で生活して、映画を観る際のやむを得ない不自由。だからこそ観たかった映画フィルムが全国巡回の途中で神戸にやってきて上映されることになったのなら、できれば足を運んで入場料を払って観たいと思ってます。好きなアーティストのライブに金払ったり、CD買うのといっしょの感覚で、投げ銭的：応援的な。“地方”にも（決して多くはなくとも）需要があるのなと認識されるためにはね。
ただ、ネット（とりわけtwitterのようなリアルタイムウェブ）の普及で、以前からあった映画の受容環境の格差がはっきり見えるようになったから、より意識されるようになったんだな、と思います。そりゃ、公開時期の差とか公開館数の差、公開される映画の数や種類の差はあるわな、と以前からわかってはいた、けど、ネットによって目に見えて分かるようになってしまったというわけで。東京以外はすべて“地方”。でも“地方”に住んでる者にとっては、ここで生活していくんだから、うん、この環境でやっていきますよ、この土地で。
《補足》
※１ 神戸は大阪（梅田）へのアクセスもいいし恵まれてると思います、ほんと。ただ、東京でよくやっているらしい企画モノとか特集上映とかはさっぱりです。
※『さんかく』とか、知らぬ間に東京大阪あたりの大都市でやって、小都市はスルーの場合があって、本当に観逃しやすい。『ばかもの』は大阪のみ上映らしいと気づけたのでなんとか観られたけど･･･
