『犬猿』
ぼちぼちと気になる映画は観にいっていて感想もまとめたいと思ってるけど、とりあえず昨日観た映画の印象が鮮烈なうちに感想をすぐに書き留める。
今作は観ながら「つれー。つれーわー」とちょいちょい小声で言ってたほど辛面白さがあるんだけど(主に姉パート、あの花言葉調べてからの踊るシーンは選曲の感じも含め最高)、思いがけずガツンときたのは以下のような場面。
窪田くん演じる弟が色々あってやっぱ厄介ごとを引き起こした兄(新井さん)のことを疎んじる発言をし、「あいつと俺、本当に兄弟?あいつあまりに俺らと違いすぎるよ。お父さんも人の借金を連帯保証人になって負わされたのを文句も愚痴も一切言わずにいるような人なのに」と言うと、母が「お父さん、愚痴も文句も口では一切言わないけど、寝てる時に『殺してやる』とか『金返せ』とか大声で寝言言ってすごいんだから。結局、親子(家族)なんだよねえ」
このボディーブロウ感すごい。家族からの逃れられなさに絡め取られる絶望感がふわっと窪田くんの表情に浮かぶ。
やばいビジネスで羽振りがよくなった兄にすごいジェラスを感じつつ、「地道が一番なんだから欲しいものは自分で買うから」と兄がプレゼントしようとするものすべて否定してた窪田くん。しかし、会社で上司から「君、頑張ってくれて成果出てるから昇給するよ!7千円だよー*1やっぱり地道が一番。」と言われて一瞬窪田くん、すごい目つきになるんすよね。その後駐車場から車出そうとして(ボロいので)なかなかエンジンがかからない窪田くんの様子を見て同僚が「大丈夫?」って聞く。もちろん穏やかげに(でも若干死んだ目で)「大丈夫大丈夫」と言うんだけど同僚は「や、さっき人殺しそうな目をしてたから」。…って!人にそんなこと言うって*2あり得ないけど、これは映画だからOKなセリフ。
そんなうまくいくわけない、いつか自滅するよ、と思ってバカにしてる兄なのに、やたら羽振り良くしてるあいつに比べて俺の昇給ってそんなもんかよ。兄に嫉妬してる、でも嫉妬を感じてる自分を否定して泰然自若と平気なふりしてる。こんな複雑なぐちゃぐちゃした感情が沸き起こるっていうところに、血のつながりからの逃れられなさ、見えない縛りのきつさを感じさせる。
…いや血のつながり、っていうか「家族という共同体に依存して生きねばならない時空間」が生む何か、という気がしますが。血が繋がっていても、感情や思考は異なる、全然違うそれぞれ独立した個体。だからこそ、合う合わないもあるのに「家族なんだから」の一言で折り合っていかねばならない小さな集合体。
愛おしくなったり、尊くなったり、かけがえがなく優しくしたい、と思ったりすることと、どうしてそんなことするんだとイライラしたり、考えが全く合わず頭にきたり、いっそ消えてくれ!と思うこと、全てが共存し、それぞれの瞬間瞬間での感情の発露はいちいち嘘じゃない真実なんだという厄介さ。
「頭良くてプライドが高いんだよね」と姉のことを評する妹。いや、逆に言えば、頭が良くない自分、と感じてるコンプレックスがあるってことで。まさに諸刃の剣というか、きょうだいを評する言葉は、裏っ返せば、そのまま自分の弱いとこだったりもするし、きょうだいをそんな風に他者に言っちゃう自分が嫌になってしまうというなんともいえぬ負のスパイラル。聞き手が同調して、自分のきょうだいのことを少し非難する口調になると、かえって悪し様に言ってたきょうだいのことを擁護したりして。こういう複雑な感情の動きをさらっと描き出すうまさ。
良かれと思って、何気なく言ったつまらない一言が「あんた私(俺)を馬鹿にしてんの」となるラストの兄弟姉妹の会話の流れの巧みなこと。人は変わる?変わらない?いや、変わるし変わらない。人間はガチガチに固まった存在じゃないから、感情がある生き物だから。優しさが勝るときもあれば、うざい、嫌い、の方が勝るときもあるでしょ。どういう感情がそのとき高ぶるかだけ問題であって、オセロみたいに表が裏に変わるようなことがないのが人間。100%の善と悪があるならいっそ気が楽。そうじゃないから複雑怪奇でなんだか愛おしくてたいそう面倒で、それゆえそれらを表現しようと映画や本や音楽なんかの創作物が絶えることなく生まれ続けるのが人間世界。…と『スリー・ビルボード』という傑作を観たときにも思ったことをふと思い出したりもしましたね。
2017年のアルバム10枚
音楽の情報を漁りに行って、ガツガツ音楽を聴くことはないけれど、昔から聴いてるものは新譜が出たら買ってみたりする。モノのカタチとして音楽ソフトを買い、リッピングして、CDは棚に並べる。というところまでして、自分の音楽ライブラリに入った感があるという旧世代の人間です。2017年に数少ないながらも購入し、よく聴いたアルバムを記録として。
1 Beck 「COLORS」
Beckで一番聴いたのは「Odelay」な世代です。昨年はしばらく聴いてなかった彼の音源を購入して色々聴いたりしたけど昨年でた新譜がまた良くて。久々に聴きながらステップ踏んだり一緒に歌いたくなった最高の一枚。
2 サニーデイ・サービス「Popcorn Ballads」
一昨年の「DANCE TO YOU」がものすごい歴史的名盤で、ここまでキャリア重ねてきた彼らが今こんなの出せるのか!と驚いたのですが、その次の音源がまた雑多な2枚組というのもサニーデイらしい。ライブ見たけどやっぱかっこよかったよ。
3 Cigarettes After Sex 「Cigarettes After Sex」
アルバムの1音目が鳴った瞬間から、その閉じた世界にどっぷりと嵌らせてくれるバンド。夜の音楽。とても好き。ジャケも好き。

Cigarettes After Sex / Cigarettes After Sex 【CD】
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※amazonではなぜかアダルト扱い…
4 Alt-J 「Awesome Wave」
去年なら「Relaxer」でしょ、という感じですが、去年このバンドを知って、まずこのアルバムを買って「うはー」と唸ったので自分にとっては昨年枠。
5 「Baby Driver」 Ost
去年観てすごく気に入った映画。サントラもよく聴いたよ。

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6 「20th century woman」Ost
この映画も昨年観て大好きな映画。「おしゃれ」とか「センスいい」と衒いなく言えちゃう映画で、サントラも同様に「おしゃれ」で「センスいい」んだ。

- アーティスト: サントラ,ロジャー・ニール,スティーヴ・ディグル,スティーブン・ガーベイ,マー
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すごいベテランですがここにきてバンド名を冠するアルバムを出してきました。とてもよかったよ。
8 Ride 「Weather Diaries」
変わらぬRide節。
9 「Trainspotting2」Ost
去年観て前作からの年月加算もあってすごく響いた映画(とはいえ別に重くもなんともないとこが良い)。サントラもよく聴いた。

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10 Aimee Mann 「Mental Illness」
買ったり買ってなかったりするエイミー・マン音源。去年はなんとはなしに購入し、よく聴いた。彼女の声は素敵だし、ルックスもとてもかっこいい。
Spotifyもいいけど音源買うのはやめられない自分。今年はどんな音源を買うのやら。
イーちゃんのこと
イーちゃんは2017年1月13日に旅立ちました。
一足早く、ネクストステージに行ってしまいました。
私が一緒に住みだした当初、人見知りの彼は逃げ回って姿をなかなか見せてくれませんでしたが、「あ、このひとこの家にずっといる人なのか」と認知してくれてからは、足元にやってきてはコロン「さぁ、なでていいよ」。丸々としたイーちゃんに「重いよー」といっても足の甲の上からどきません。
家の人が見たことのない表情や行動も見せてくれた。ある朝、いつもの時間に起きて朝のパンを食べようとしたらテーブルの向かいのイスにすわったイーちゃん。あの朝はなんでこんな表情したんだろ。
またある日、洗うために炊飯釜に水を張ってたらキッチンのカウンターにのぼってその水を飲もうとしたので、「ダメだよ、イーちゃん」と声をかけると、なんとおしっこをこっちに向けてしたイーちゃん(あの放物線が忘れられない)。家の人にこのことを話したら「えー?」と驚いてた。後にも先ににもあの一回だけなのだけど。家の新参者の私はなめられてたのかなんなのか…今思い出すとおもしろいし、自分にしかみせない顔を見せてくれたことがうれしかったりもする。
わがままで、怒られるのがわかっててテーブルに乗って「かまって」と言ってみたり、ゴロゴロ喉を鳴らして丸くなるイーちゃんは賢くて可愛くてそれだけで充足した完全な存在でした。
運動能力が高くて、もはや人間でいえばおじいちゃんの年齢なのに、ひらりと華麗にキッチンのカウンターに飛び乗ってた。重たいドアも自在に開ける力もあった。それが昨年秋から後ろ足を引きずるようになった。どうも軽々と飛び乗れてたカウンターへのジャンプに失敗したことが原因らしい。だんだん食欲がなくなり、年末近くには痩せて、歩きながらよろけてしまうようになった。それでも家中のあちこちヨロヨロと歩いてパトロールし、寒い風呂場のドアの前で鳴く。イーちゃんはお風呂場のお水飲むのすきなんだよね。ダメだよ、といっても隙あらば忍び込んで飲んでたよね。
イーちゃんは歩くこともままならなくなって、発作も起こり、もう逝ってしまうの?という状態になってから、それでも10日くらいがんばって、私たちと同じ世界に踏みとどまってくれた。ネコの寿命はヒトより短くて、ムリなのは分かってても「イーちゃん、私が死ぬまで生きるんだよ」とずっと前から言い続けてた私をなだめるためにがんばってくれたのかな。さすがイーちゃん。強くて賢くて可愛いイーちゃんは、がんばってくれた。
本当にイーちゃんに会えてよかった。
亡くなる前々日も前日も私の姿をみて、ミャアミャアと声を出してお喋りしてくれた。目を細めたりしてくれた。
いまはエア・イーちゃんが私の近くにいてくれてるんだけど、やっぱりそのフワフワの毛に触りたいし、鳴く声も聴きたいよ。私はしばしこっちの世界に留まるけど、そっちに行ったら、また足元コロンしてよね。
2016年に観た映画をふりかえる(その2 勝手に部門別)
結局大晦日はもろもろ片づけているうちに映画に行くような余裕はなくなり、2016年の映画納めは『ドント・ブリーズ』となりました。映画祭の旧作上映も含むと劇場での実質鑑賞本数は124本。複数回鑑賞は『シン・ゴジラ』の2回でした。1本あたりの平均鑑賞料金は1087円。全鑑賞映画のランキング的なものも余裕があったらやりたいのですが、とりあえず先日のベスト記事に引き続き今日は勝手に部門別ランキングを設けましてふりかえります。
予告にうんざり部門
自分は座席をど真ん中あたりを押さえることが多いため、わりと早めに劇場に入るので否応なしにすべての予告を観ることになる。しかもTOHOシネマズに行く機会がおおいため、必然的に東宝系のものが多い。作品の出来云々ではなく、予告を観ることに食傷してしまったということです。(とはいっても『怒り』以外は結局本編は観てないですが)
・『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 「だきしめ…たい」「だきしめたらいいんじゃない…かな」※地味に東出君の「タカトシの彼女のエミちゃんです」も印象に残る
・『怒り』…いかり(予告の最後のナレーション)
・『海賊とよばれた男』「日本人がおるかぎりこの国は再び立ち上がる!!」「メジャーに会社の舵を渡すわけにはいかん!」※とにかくずっと叫んでいる
・番外『世界の果てまでヒャッハー』のマナー啓発CM これ、シネマートでもシネリーブルでも長期間延々流れてたので、うんざりして、そのうちこのCM中は無の境地に達するようになりました。当然のごとく今作本編の予告編にも食傷…
音が凄かった部門
音楽がよかった部門
- 『シング・ストリート 未来への歌』オリジナル楽曲がすべて素晴らしい大好き
- 『ブルーに生まれついて』似てる似てないというレベルの問題でなく、イーサン・ホークは劇中完全にチェットだった
- 『スタートレックBEYOND』宇宙空間に鳴り響くビースティ・ボーイズ
- 『シン・ゴジラ』伊福部ミュージック力+エヴァ楽曲のハマリ具合
- 『オデッセイ』ジェシカ・チャスティン船長チョイスのディスコミュージック
ベストエンディング曲
『海よりもまだ深く』 ハナレグミ「深呼吸」
ハナレグミ – 深呼吸 【Music Video Short ver.】
ベスト犬 『クリーピー』のマックス!
ベスト猫 『幸せなひとりぼっち』の野良猫!
ベスト熊 『パディントン』のパディントン!※次点は『レヴェナント』の熊
ベストオオカミ 『神なるオオカミ』のオオカミ!
ベスト噛ませ犬部門 ドーナル・グリーソン!
『ブルックリン』『エクス・マキナ』の二作品で受賞です。地味に『アンブロークン 不屈の男』でも主人公を引き立たせるための噛ませ犬的役割でいい演技をしてました。今後『スターウォーズ』での(かませ犬としての)活躍も期待されます。
ゲス&クズい男部門
- 『ザ・ギフト』サイモン(ジェイソン・ベイトマン)クズはいつまでたってもクズ
- 『ガール・オン・ザ・トレイン』トム(ジャスティン・セロー)かなりゲスい
- 『疑惑のチャンピオン』ランス・アームストロング(ベン・フォスター)黒すぎる
- 『葛城事件』葛城清(三浦友和)葛城稔(若葉竜也)親子でダメ
- 『アイ・アム・ア・ヒーロー』井浦(吉沢悠)オーバーオールのゲスい奴
- 『裸足の季節』エロル(アイベルク・ペキジャン)最低かつ最悪のゲス叔父
気持ち悪い男部門 ※『ある天文学者~』以外はいい意味で気持ち悪いけど『ある天文学者は~』は本気で気持ち悪いですよ。
- 『ある天文学者の恋文』エド(ジェレミー・アイアンズ)トルナトーレを反映させた(としか思えない)キャラが自己愛がキツすぎてひたすらに気持ち悪い。映画すべて気持ち悪い。
- 『淵に立つ』八坂草太郎(浅野忠信)不気味。服装も独特で人外の感じ
- 『クリーピー』西野(香川照之)あの人お父さんじゃありません、気持ち悪いおじさんです
ベストメガネ 『ちはやふる』の机くん
ファッション素敵部門
- 『ブルックリン』洋服、そして色使い
- 『キャロル』ケイト・ブランシェットのゴージャスな毛皮や赤色、ルーニー・マーラのベレー帽
お仕事映画部門 ※いずれの作品も変にドラマティックにするために設定されるようなタスクを達成するのにジャマをするキャラがいないのがとてもよかった。
- 『シン・ゴジラ』
- 『ハドソン川の奇跡』
- 『オデッセイ』
- 『スポットライト 世紀のスクープ』
- 『ブリッジ・オブ・スパイ』
ヘンテコだけど好きな映画部門
- 『ロブスター』アイディアが奇抜。面白ダンスも味わい深かった
- 『神様メール』ユニーク!
- 『アスファルト』かわいい、人を信じたくなるおとぎ話
- 『マジカル・ガール』あの蜥蜴部屋は一体
- 『グッバイ、サマー』臆面もなく言っちゃうますがとにかくセンスがよくてオシャレな映画
タイトルの出方ベスト映画 『ヒメアノ~ル』
この邦題…部門 日本で公開するとなると直訳では難しいのかなと思いつつ
- 『リリーのすべて』(原題)Danish Girl
- 『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(原題) WHILE WE'RE YOUNG
- 『幸せなひとりぼっち』(原題)EN MAN SOM HETER OVE(英題)A MAN CALLED OVE
コメディ映画部門
- 『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』おもしろかった!
- 『ゴースト・バスターズ』ケヴィン=クリス・ヘムズワース最高か
- 『私の少女時代』とても笑ってとても泣いた
- 『クリーピー』香川照之
気になりだした男優部門
- ピーター・サースガード 『ブラック・スキャンダル』ほか ゲスを演じて天下一品
- ドーナル・グリーソン 『ブルックリン』『エクス・マキナ』スーパーなで肩噛ませ犬
- カン・ドンウォン 『プリースト』『華麗なるリベンジ』かわいい
- サム・ライリー 『高慢と偏見とゾンビ』かっこいい
- ベン・フォスター 『疑惑のチャンピオン』闇を抱えた男を演じて天下一品
- 菅田 将暉 『溺れるナイフ』ほか 昨年一番邦画で観かけたような気がする。
- 池松 壮亮 『海よりもまだ深く』『永い言い訳』少しの出演でもとても良い仕事してる
よかった女優部門
- エミリー・ブラント 『ボーダーライン』『ガール・オン・ザ・トレイン』弱さを抱えた演技が上手い
- アリシア・ヴィキャンデル 『リリーのすべて』『エクス・マキナ』かわいい強い
- ケイト・マッキノン 『ゴースト・バスターズ』ホルツマン!
- 佐津川愛美 『ヒメアノ~ル』『貞子vs伽椰子』いいっす
- 黒木華 『リップヴァンウィンクルの花嫁』
- 広瀬すず 『ちはやふる』『怒り』
- 竹内結子 『残穢』『クリーピー』
印象に残った食べ物部門
- 『パディントン』のマーマレード
- 『ヘイトフル・エイト』のシチュー
- 『レヴェナント』の生肉
ベスト小道具 『ガール・オン・ザ・トレイン』のワインオープナー
ベスト人外役者部門※人ならざる人のような存在 東出昌大『クリーピー』『聖の青春』
ベスト肩書き 『クリーピー』の西野(香川照之)の「協会理事」!
印象的な帰り道(徹夜した明け方の帰り道)部門
- 『イット・フォローズ』
- 『母の残像』
顔面力あったな部門
- 『日本で一番悪い奴ら』全員
- 『クリーピー』香川照之
子役よかった部門
- 『こころに剣士を』
- 『ルーム』
- 『永い言い訳』
アクション素敵部門
あー、キリがない。とりあえず今日はこのあたりで。思いだしながら書くのたのしいな。2017年はどんな部門をつくりたくなるような映画があるかなー、たのしみだ。
2016年に観た映画をふりかえる(その1 ベスト作品)
2016年もおしまいです。一年、早いなぁ、と毎年同じことを言っている。「ていねいな暮らし」みたいなのには程遠く、仕事、疲労、ガチガチの体をほぐすためのマッサージ、ご飯、洗濯、そうじ、インターネット、睡眠などで終了していく毎日。それでも日々の積み重ねは尊い、と信じている。そんな尊い日々、貴重で有限な人生の時間のうち、週に2時間や4時間(ときには6時間や8時間)は映画を観ることに費やしています。映画をみて、インプットしたことを以前はマメに文章にしていたのですが、いまはそういう時間を割くこともできていません。現在は、インプットしたものを自分のなかで咀嚼して、考えて、話すことでアウトプットしている。聞かされる家人はどう思っているかは分からないけど(右から左へ抜けてることもあるかも?)、映画をみて思ったことやあれこれを間をおかずにアウトプットできる相手がいるのは有難いと思っています。
さて、ひょっとしたら大晦日に映画を観に行くかもしれないけど、それは旧作リマスターになるので、新作で観た作品のベストを考えてみたので文章をしたためることにした。これはあくまで現時点。じわじわ時間が経つごとに味わいが増す発酵食品のような映画もあるのですがね。では参りましょう。まずは年間ベスト。
『さざなみ』
ラストのシャーロット・ランプリングの表情が絶品です。構成も巧みだし、とても唸らされた映画でした。出来た瞬間クラシック、という風格。
『私の少女時代』
台湾青春映画は本当に傑作が多いのだけど、そのマスターピースに連なる一作。ベタ演出満載のコメディなんですがね。こういう回顧形式の映画は青春パートだけキラキラして現代パートがイマイチだったりするのですが、今作は現代パートも良いです。映画祭でみたので、予備知識がなく、サプライズ演出に素直に驚いてしまいました。それも印象深い要因かも。
『クリーピー』
黒沢清の本領発揮!めちゃめちゃ笑えるし、しかも不気味でこわい!というこのバランス。香川照之のパンチライン連発すぎるセリフといい、監督おなじみの風にゆれるカーテンやスクリーンプロセスを使った撮影、極端な照明効果に加え、流行りのドローン撮影などすべてがうまく組み合わさりすぎです。上半期より年間のほうが順位があがるというじわじわ来る映画。
『ハドソン川の奇跡』
手だれの職人が、ささっと撮ったコンパクトな作品みたいなのだけど、これが絶品の逸品。ほぼ全編デジタルIMAXカメラでの撮影、という事前情報に、どうして?と謎だったけど観たら納得の迫力ある映像。残念ながらIMAXのハコで観ることはできなかったけど(TOHOなんばのIMAXがもうすこし早く出来てればな…)、映像の力といい、シンプルで力強いストーリーラインといいイーストウッド御大、さすが。
『シン・ゴジラ』
庵野さんが「好きにした」ゴジラ。エヴァなゴジラ。秀でた作家が相性の良い題材でやりたいことをやったら面白くなるわけだ。日本政府の意思決定プロセスは会社員でも公務員でも、ピラミッド型組織に属する者には「あるある」な描写あったのでは。そしてゴジラの形態。あの気持ち悪さ、素晴らしかったです。
ちょっと前にあったアシュトン・カッチャー版とお間違いなきよう。ダニー・ボイル監督マイケル・ファスベンダー主演のほうです。実際のジョブズの人となりはそれはもう大迷惑な最低野郎としか思えないのですが、今作では、映画のマジックによりとてもいいヤツだったかのように思えてくる。実話という事実の種をいかに育てるか、フィクションによる再構築、編集の妙、その凄さを感じられる作品。脚本がアーロン・ソーキン(『ソーシャル・ネットワーク』脚本)ということで大納得。役者陣の演技も絶品です。
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『ヒメアノ~ル』
ネットの映画好きの人々の評判がすごかったので観にいってみて、これは度胆抜かれた。吉田監督作品は何作か観ていてもともと好きだったけど、こういうバイオレントな映画をこんなふうに撮れる方だったのか!と。そして特筆すべきは森田剛。最高です。タイトルの出方は今作が今年ベストかも。
『ダゲレオタイプの女』
黒沢作品二作品目!監督はフランスとの相性がいいんだな~と思った。『クリーピー』ほどギャグは無く、しみじみとする怖くて素敵なラブストーリー。青いドレスの美しさが忘れられない映像もよかったな。良いクロサワ作品を二作も観られていい年でした。モチーフ的には乱歩ぽさ(『押絵と旅する男』的な)もあったりして、好きだな~。
『海よりもまだ深く』
是枝さんの作品では一番好きかも。冒頭の1シーンで、もう、これは間違いない映画だと思った。団地映画としても至高でしょう。いい映画です。是枝さんが関わった西川美和監督の『永い言い訳』(今年公開)もめちゃめちゃいい映画で大好きです(ベスト10本には入れられなかったけど)
『母の残像』
これはストーリーを説明しがたい映画なんだけど、ディテールがとても丁寧で、しかも題材的に深刻ぶったお話にいくらでもできるのに、ギャグも結構織り込まれてて、そのユーモアが結構効いてる。そして実は青春ものでもあるという、予想外の展開。ユペール様もすばらしく、早口ジェシーにガブリエル・バーンという結構豪華キャストを生かしきってたトリアー甥っこ、要注目だな、と思いました。すごくじわじわと好き。
では半年ごとで区切って考えた上半期と下半期のベストを
上半期ベスト
『さざなみ』『私の少女時代』『スティーブ・ジョブズ』『サウルの息子』『神なるオオカミ』『スポットライト』『ヒメアノ~ル』『ボーダーライン』『クリーピー』『海よりもまだ深く』
※ベストには漏れた『サウルの息子』は強烈な映画でした。忘れがたい映画。『スポットライト』も力強いいい映画。
下半期ベスト
『シン・ゴジラ』『ハドソン川の奇跡』『ザ・ギフト』『ダゲレオタイプの女』『母の残像』『ブルーに生まれついて』『ブリジット・ジョーンズの日記』『ブルックリン』『永い言い訳』『シング・ストリート』
※『ブルーに生まれついて』はチェット・ベイカーをモデルとする映画。これもすばらしかった。ベストにいれたかった。ラストの切なさがたまらない。『ザ・ギフト』ジョエル・エドガートンの才能に驚嘆したし大好きだな~。『ブリジット・ジョーンズの日記』はイギリスコメディ映画の久しぶりの続編でそこまで期待してなかったけどおもしろかった!コリン・ファースがかっこよい可愛いすぎて悶絶ものでした。『ブルックリン』ファッションが素敵だし、ドーナル・グリーソンもよかったですよ。『シング・ストリート』はあの頃の音楽そしてMV好きの自分にはたまらなかった。サントラをリピート&リピート再生してました。
とりあえずきょうのところはここまで。
極私的戦争映画ベストテン
ワッシュさんの企画に今年も参加します!
戦争映画は観ている本数は少ないと思いますが、特に印象に残っているものを挙げます。
1『フルメタル・ジャケット』監督:S・キューブリック
※ハートマン軍曹×微笑みデブ!
2『イングロリアス・バスターズ』監督:Q・タランティーノ
※ランダ大佐!
3『ディア・ハンター』監督:M・チミノ
※若きクリストファー・ウォーケン最高か
4『パンズ・ラビリンス』監督:G・デル・トロ
※デル・トロで一番好きなスペイン内戦を舞台とするダークファンタジーの傑作。
5『ブラックホーク・ダウン』監督:R・スコット
※RPG!
6『野火』監督:塚本 普也
※生き延びることの残酷さ
7『サウルの息子』監督:N・ラースロー
※衝撃の一作
8『カティンの森』監督:A・ワイダ
※カティンの森事件で父を亡くした監督の思いをあらわす作品
9『マレーナ』監督:G・トルナトーレ
※モニカ・ベルッチ!
10『プライベート・ライアン』監督:S・スピルバーグ
※オマハビーチ!
以上おもいつくままに。トップ10には入れられなかったけど、『この世界の片隅に』や『高地戦』『ローン・サバイバー』もよかったです。ともあれ、日常を生きるものとしては、平和が一番だよ。戦争は映画の中だけのことだったらいいのに。
いまそこにある夫婦の危機『さざなみ』
先日『さざなみ』を観たんですがね、これがすばらしかった。無邪気(悪くいうとアホ)な夫の言動に対する、妻本人すら意識していないレベルで心の奥底の心情なり本音が、ふと表情にあらわれる瞬間(その素の表情の恐ろしさったら、ない)をとらえまくった真に恐ろしいすばらしい映画なのです。監督インタビュー記事
『さざなみ』ヘイ監督「ゲイの僕が“誰かと繋がりたい心”を理解する際の問題を描いた」|結婚45年の夫婦の危機をアカデミー賞ノミネートのシャーロット・ランプリングが演じる - 骰子の眼 - webDICE
『さざなみ』:愛の深さは歳月で測れるのかアンドリュー・ヘイ監督インタビュー|ANTENNA -Culture-|.fatale|fatale.honeyee.com
をみても、「ホラー」という単語が出てきた。まさにこの映画はホラーといってもいいくらいじわじわと見る者にせまって、こちらの感情を揺さぶる。シャーロット・ランプリングが名演すぎてこわかったです。ラストも、これはこうなるよな、と納得がいく。それまでの積み重ねがあるからね。
なにげない会話に含まれた意図。会話において、嘘をついてくれてもいいから、うわべだけでもいいから、とこちらが期待した答えを裏切るような答えが無邪気なまでに無頓着に返ってきたときに感じる断絶というかちいさな絶望。その積み重ねがどんどん追い詰めていく。妻の心は不審と闇に覆われていく~もうランプリングのライフはゼロよ!それまで45年の積み重ねがあろうと、砂上の楼閣のごとくガラガラと崩れ果て、遺跡のように残った土台にもはや新たな関係を築くことなんてムリムリ不可能。その詳細はぜひ映画本編を観て味わってほしいところです。
こういうホラーとしかいいようのない夫婦関係の危機映画といえば、昨年観た『フレンチアルプスで起きたこと』もそうでした。夫婦以外の第三者が入るシーンや全く関係なさそうなシーンもすべてが夫婦関係の危機を感じさせるというのがよくできてるなぁと感銘をうける映画の特徴ですね。最も人間に影響をあたえるだろう”家族関係の土台がゆらぐようなこと”は、他の関係なさそうな日常にも物凄く影響を与えるものなので。あと夫が不都合なことは認めない、自分はあくまで悪くない、とかたくなになるところも共通してるな。
どちらの映画にもいえるのは「夫は自分のなにが悪かったか(妻に対して良くなかった、不誠実だったか)が分かってないし、これからもきっとわからない」ということです。口では謝っても、心底はわかってねぇなぁ、ということが妻にはバレバレなのだ。だから絶望する。これまでのすべて、しあわせだったことすら反転する。『さざなみ』の夫婦も、『フレンチアルプスで起きたこと』の夫婦もこの先どうなったんだろう、というエンディングの余韻がずっと後を引く。こういう「観終わっていろいろ考えちゃったり、あのあとの物語はどうなったんだろうな、とか考えちゃう」映画はいいですね。それにしてもあのダンナ本当救いがたいな。