祈り!光!『塔の上のラプンツェル』

先週から週末にかけて観た映画はよかったな。順次、ゆっくり感想を書くことにして、今日は昨日ミント神戸の一番大きなスクリーン2(308席)で観た『塔の上のラプンツェル』について書いてみます。3DのCGアニメを観たのは、昨年の『ヒックとドラゴン』以来。アニメはエヴァくらいしか劇場で観てないし、CGはなおさら観ておらず。『ヒック』は良かったけれど、事前の評判が良過ぎたため、期待値があがりすぎていたようで、そこまで「すごい!」と心にズシン、と来るには至らなかったです。さて、『ラプンツェル』。自分は、日本語吹き替え+3Dで観ました。3Dメガネに備えて、自分の持ってる中で最も軽くボリューム小さめのメガネをチョイスしていきましたよ(それでも最後にはノーズパッドが鼻にめり込むかと思った)。
よかった点。(4、として書いた最後の一点が、とりわけ自分の心揺さぶったのですが、これはかなり私的心の動きです。)
1、絵。動き。技術。
ラプンツェルの肌のすべすべ。髪の一本一本のふさふさ。いきいきとした表情と風景、水の表現…イチイチに驚かされ、うわぁ、と口開きっぱなしになってた。ここまでできるのか!というテクニカルな面への驚きもあるけれど、現実にあり得ない質感と再現性は、現実以上に現実みたいに見えるっていう。実際の水以上にクリアで、水滴の重みや川の流れるうねりを感じさせる表現にうわぁ、とバカみたいに口をパクパクさせてた。
2、ラプンツェルとマザー・ゴーテルと歌
ラプンツェルが跳ねるように動き、長い髪を自在に使うアクション、はだしで駆け回る様、そのはだしの足の爪のかわいらしさ、編んだ髪型のかわいさ等、枚挙にいとまない。一番おもしろかったのは、塔を抜け出した彼女が「やっぱりお母様が悲しむかも」「いやでも外ってサイコー」「いやでもお母様(以下ry という躁鬱ループのところ。しょこたんのキャラとも合ってた箇所だし、場面転換の切り替えの速さがさらにおかしさを増すっていう。あと、マザー・ゴーテルの存在感と造形。ヤな奴だけど、それだけに終始しない憎めなさというか、色っぽさ*1が潜まされているルックスなのですな*2。だからミュージカル形式で歌をうたっても観る側に受け入れられる。ただの憎たらしい悪の塊だったら、歌ってんじゃねーよ、と思ってしまうでしょう。途中で出てくる盗賊の巣窟みたいなところでも、ミュージカルになった瞬間たのしさ爆発。イチイチのキャラ、細部の小ネタまで手抜きなし。ここでもちりばめられたディテールが、後に効いてくるんだから、また抜かりがなさすぎる。
3、ストーリー
ハラハラドキドキはこういうプリンセスストーリーのお約束。上ったり下がったり、罠が仕掛けられピンチに陥ったり。なのに、イチイチ「わ、フラグ立ったよ」とドキドキするっていう。最後のあの展開のところは、分かっているのに「うぉ、その苦境どうするんだよ」と思って思わず時計を確認(エンディングまでの時間を確認することによって、自分のハラハラする気持ちを収めようとするという試み)。あ、でも隣の結構年配の女性二人組みも自分以上にハラハラドキドキ、キャッキャウフフしてました。みんな夢中だな、おい。
4、夜。光。祈り。
国王と王女は、赤ん坊の頃にさらわれ、生死不明となってしまったプリンセスを思って、彼女の誕生日にたくさんのランタンを飛ばす。このシーンの美しさは、その3D効果と、ただ暗いだけじゃない夜の描写も素晴らしくて、間違いなくクライマックスシーンです。本当にうつくしい。ただ、自分は、ランタンを飛ばす前に、国王と王女が見つめあい、沈痛な表情をうかべた国王の頬に涙がつっと伝う。その涙をそっと悲しげにぬぐう王女、というシークエンスで涙がボロボロと出てきたんです。泣けるからいい映画とかそんなのではなく。きっと今このタイミングで観たからつい涙が出た。「国王は18年ほど前に失ってしまったこどもを思って、その不在の穴が埋められずにずっといるんだ!」ということが自分の心にズシンときたわけです。大切な存在の不在により欠落した部分は、埋められない、代替はない。悲しみは薄らいでも、なくなることはない。今の東日本の地震津波で大切な人や存在を失った人たちも、死者何千人といっても、それはひとつひとつ、欠けて埋められない存在なんだよな、と連想してしまったのでした。死者の数が少ないから原子力のほうがリスクが少ない、とかありえん。この発言をネットでうっすら見かけて、心がもやもやしていた時だったんで、余計に国王の涙が響いたと思う。なので、全然違うタイミングで観てたら、そこまで思わなかったろうな。まぁ、そんなタイミングも含めて映画体験てことで。祈りは光で表される。日本でもそうだな。オザケンも歌ってたし、この愛はメッセージ!祈り!光!ってね。
塔の上のラプンツェル(2010/アメリカ)監督:バイロン・ハワード、ネイサン・グレノ
http://www.disney.co.jp/movies/tounoue/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD16871/index.html

しょこたん、ちょっと固いとこもあったけど、まあ大丈夫。剣幸さんよかったよ、歌うまいしな。
※カメレオン、キュートすぎた。

*1:直球表現⇒胸元

*2:ディズニー・クオリティ