カナザワ映画祭に行ってきました(その3)9/19月(3日目〜最終日編)

ふたたび寝て起きて、3日目です。
1、雨ふり
結構な雨に結構な寒さ。前日との気温差もすごくて震えました。トークの整理番号を早めに並んでゲットしたのち、武家屋敷をちょっと見にいきましたが、雨により十分堪能できなかったような感じ。寒さに震えつつ、早めに昼食を食べることにして川福といううどん屋へ・・・て、コレなんか覚えがあると思ったらやっぱり心斎橋にもある店だと気付く。心斎橋で何回も行ったことはあったのですが、ここは身体を温めることが重要だったので、入店し、きのこうどんを食します。美味い。

2、『マンディンゴ
これまた町山さんの本やpodcastで紹介されていたので、絶対観たかった作品です。南北戦争以前の黒人奴隷の現実を描いた映画で、たしかに奴隷制度はひどいひどいとわかっていても、ここまで容赦なく描かれるとさすがに暗澹たる気持ちになってくる。リウマチの痛みを取るのに奴隷のこどもをオットマン扱い*1するとか、闘犬のように、奴隷同士を一方が死ぬまで戦わせて見物したり。黒人はシステムに取り込まれた存在ゆえに反抗したら命はないし(そもそも人間扱いされてないわけですが)、性的にも働き手としても、隷属状態で自由はない。また今作では黒人への搾取ばかりでなく、女性への差別的な構造も描かれているのが興味深かったです。女性はそれこそ“産む機械”扱いですよ。しかも処女じゃなければ蔑まれる。一方の女性側も“自分は夫に愛され子供を産んでこそ存在意義があるんだ”、という価値観の中に生きてるんだよな…黒人・女性は“機能”としてしかみなされていない時代。さて、この時代にあって、主人公はほかの白人とは違い少しは黒人を人間扱いしているように見えかけるんだけど、そんな人道的配慮なんてできない結局他と変わらないヤツだとわかる。ディテールの描き込みといい、俳優陣の演技といい、観てよかったですよ。ケン・ノートンのいい筋肉もみられたし。

マンディンゴ [DVD]

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3、バイオレンス・トーク
町山智広さん×宇多丸さん×高橋ヨシキさんのバイオレンス映画に関してのトークです。とにかく楽しいし面白いしタメになるという素晴らしいトーク。アクション映画と暴力映画の違いについて、まず町山さんが言われたのが:暴力映画は“暴力についての映画”である、と。アクション映画は暴力でスカっとする映画である、と。というわけでいくつかの映画のタイトルをあげながら3人のトークは進みます。『わらの犬』を筆頭に、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『仁義の墓場』『スカーフェイス』『ビーバップハイスクール』『007ムーンレーカー』『ロボコップ』『バンビ』、北野武映画、『用心棒』、スピルバーグは“次回作は『タンタンの冒険』だよ♪”なんて言っておきながら暴力が本当に怖いからあんな暴力映画がつくれるんだ説、など縦横無尽の語りっぷり。ほんとうにおもしろくて惹きつけられるのでした。ほかにもたくさん映画をあげられてたけどうろおぼえにつきすでに忘却の彼方に…。また町山さんはじめみなさんのトークを聞きたいなぁ…。あと、高橋ヨシキさんが監督した『ヘルドライバー』のスピンオフ短編のエクスクルーシブな上映もありましたが、上映後に町山さんがヨシキさんに「困っちゃうなー、オレ全然わかんない」と言ってたのが印象的でした。素直。
4、ごはん〜『アンデスの聖餐
『ソドムの市』はパスして、早めにごはんを食べに行ったはいいのですが、少しだけなら良かろう、とアルコールを摂取したところ、上映開始を前に眠くなる事態に陥りました。そのコンディションでの『アンデスの聖餐』は危険。うつらうつらしつつ、はっと映画を観るの繰り返し。きわめてマジメで綿密な構成のドキュメンタリーで、超有名事件の誠実な検証は興味深かったです*2。そして上映後に教えてもらったのですが、脚本がマリオ・バルガス・リョサ!2010年ノーベル文学賞を受賞したあの作家とは意外でした。これで自分が予定していたカナザワ映画祭の日程は終了。雨はやんだものの、かなり寒い中を宿へ帰ったのでした。
アンデスの聖餐 (ハヤカワ文庫 NF 20)

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生きてこそ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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5、最終日
また寝て起きてチェックアウトしたのち、いったん駅に行き、荷物を預けてから香林坊へ歩きます。金沢21世紀美術館をゆっくりみるのが今回の旅の目的のひとつでもあったのですが…台風接近にともなう雨の中ようやっとたどり着いた美術館がやけに閑散…イヤな予感。はい、休館日。しばし入口で佇んでしまいました。これは来年も金沢に来なさい、宿題残しといたよ、という金沢の神の采配か、と思うことにしました。とはいえ自分のうかつさに呆然としましたけどね。…やむを得ず近くの文学記念館みたいなところに入って泉鏡花の展示などをみたのち、金沢名物と言われるハントンライスを食べにグリルオーツカへ行ってみた。ごはんがみっしり詰まってました。隣のテーブルの人は大盛りを注文してきゃっきゃ言って写真撮ってましたがすごい量じゃ…。
 平日なので空いてた。
そして駅でお土産を買い、サンダーバードで帰途につきました。雨にたたられた滞在だったけど、全国からこられた映画ファンの方々にもお会いできたり、爆音上映も楽しめたし、ティーチインやトークなどお祭り感を味わえました。楽しかったな。一人旅ながら、今回は寂しくなかったです。また来年も来たい、と思いましたよ。

*1:そうすればオットマン扱いしている子供のほうに痛みが移るとの説

*2:夢の中でみた映画のようなふわふわした印象ですが…