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プロフェッショナル、仕事の流儀『マネーボール』

この映画を観ながら途中で「あ、なんか『ソーシャル・ネットワーク』に似てるな」とぼんやり思って「いやいや、宣伝で思いっきり『ソーシャル〜』の製作陣が贈る、って謳ってたじゃん」と自分で自分に突っ込んだ次第です。画面の質感とか撮り方というレベルでも似てるな、と思うし、セリフで畳み掛けて圧倒するシークエンスと静的ながらも飽きさせないシークエンスの配分とかも似ている。しかしなにより似ているなと感じさせられた要因は両作から感じられる“実在の人物やエピソードをクールにまとめあげた感”なんですよね。クールな仕上がりの映画を観ながら、製作陣には頭がいい人たちが集まってるんだろうな、と感じてました。
『ソーシャル〜』では主人公を取り巻く脇役たちとの関係性のなかで、(映画の中の)マーク・ザッカーバーグというアスペルガー的なキャラを主人公に据えながらも、人間の感情のドロっとしたところが見えてくるのがおもしろかった。双子の兄弟やエドゥアルドらの嫉妬とか、ねっとり描くことはしていないけれどすごく伝わってきた。賢い脚本に基づき、完璧を志向しつつも、脚本×役者陣の素晴らしい演技、撮影、演出などの相互作用や化学反応のマジックがあらわれた瞬間があるな、と感じたのです。それに比べると『マネーボール』はそのマジックが起こる手前でソツなくまとまってる感じだな、と思ったのでした。
でも、当然ながらきちんと面白いのですよ。ブラッド・ピットもいいですが、ジョナ・ヒルがよかったですね。ジョナ・ヒルの存在を通してブラピ演じる球団GMの仕事が見えやすくもなるし、師弟関係萌えもあるし、二人三脚運命共同体でバクチかけてさぁどうなる!?という物語のおもしろさもあるし。とくにブラピがわざわざジョナ・ヒルの目の前であちこち矢継ぎ早に電話をかけ交渉する様をみせつける(=目で見て盗めよ的な)ところとか、トレードやクビを選手に告げるという情が入ると辛い仕事をジョナ・ヒルにさせた後に、ブラピが自分のやり方を見せるところとか、なかなかのトレーニング萌えではないでしょうか。師匠の眼や弟子の眼をお互いに気にしあうことで職業人としての行動が規定されたり、律される。ある種“プロフェッショナル仕事の流儀”みたいですな(イメージ)。ジョナ・ヒルの丸っとした着ぐるみぽい*1ルックスもポイント高かったです。データをもてあそぶのだけに長けた*2子どもみたいだったジョナ・ヒルが、最後には他球団から引き抜きのオファーがあったブラピに助言するようなところにまで至る、対等なプロフェッショナルの立場に立った成長した感といいましょうか。
ブラピとジョナ・ヒルの二人の映画みたいになってしまっていたがために、せっかくのフィリップ・シーモア・ホフマンがあまり生かされていなかったようでそれはちょっと残念でした。シーモア・ホフマンの活躍すべき試合場面が堅実ではあるけど、ちょっとあっさり描かれていて、まるでGMのブラピの人材配置とジョナ・ヒルのデータ解析のみで快進撃できたかのような印象を受けてしまったです。
しかし全体に手堅い映画だったな。ブラピと娘とのシークエンスや彼女の歌のラストでの生かし方とか、あざといほどに見事でした。劇中では情に流されないでトレードだのなんだの散々してきたブラピが、最後の最後に自分の心情に従うところとかもね。しかし主人公が十分評価され成功をつかみかけながらも、どこかに満ち足りないところがあって、その足りないものへの渇望が残るラスト、って『ソーシャル〜』とも共通するかも(…って、ちょっと強引か)
マネーボール (2011/アメリカ)監督:ベネット・ミラー 出演:ブラッド・ピットジョナ・ヒルフィリップ・シーモア・ホフマンロビン・ライト
http://www.moneyball.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD19465/index.html

*1:ちょっと未成熟な感じ

*2:あたかもプロ野球ゲーム大得意っこみたいな