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「恋」と「変」は紙一重『私が、生きる肌』

とにかく“ユニーク”*1。それだけでも観る価値あり、と思うのですが、つらつら思い返すとお話のベースは結構定型だな、と思うのですよね。妻を失った男の喪失感。それを埋めるべく妻によく似せた人造人間つくっちゃう狂える博士。フランケンシュタインから連なるマッドサイエンティスト系譜*2?そんな博士は妻の亡霊に囚われ続けていた。ネタバレ回避ムリなので、ある程度内容に触れながら書きます。
高名な外科医のロベルは自分の部屋の隣の部屋に厳重にうつくしい女性ベラを監禁してずっと観察していた。いかにもワケありな感じ…その美しい女性は全身肌色タイツ(!)に身を包み、日がな一日ヨガや布をつかった製作などをしているのである。いったいこのワケありな女性とロベル医師の関係は…?
時系列は直線的ではありませんで、回想で6年前に戻ったり、現在*3に戻ったりします。その都度ちゃんと字幕で「6年前」とか出ますから、親切設計。というかちょっと不思議。ケドこういう時制に対しての妙な律義さは先日勢いで再見した『オール・アバウト・マイ・マザー』と同じなんですよね。きちんと「〇年後」と説明する、その字幕の出方まで一緒。これも作家性の現れかな、と思った。作家性=ものがたりの語り方、世界の設定の仕方…。…色彩の鮮やかさとセンスのいい高そうな服飾や小物といい、ある意味ちょっと現実離れしています。「〇年前」とか「そして現在」などと律儀に時間設定を語るところといい、「おはなし」を客観的に語られてる感じがして、どこか寓話っぽい、というか現実とすこし異なるパラレル物語ワールド内で展開するお話のような。そんなどこか箱庭的空想的世界というお膳立てだから、こんなヘンテコなユニークな内容が成立するのだろうな。
ヒトは見た目が〇割とかって本もちょっと前に流行ったようでしたが、結局は骨格や筋肉を覆う薄皮一枚がうつくしければ、ヒトはその中身がなんであろうと、心奪われ、そのくちびるのささやくコトバを信じたくなるのでしょうか。カンペキな肌を持つ女性…実はベラは娘をレイプした*4男(ビセンテ)をMAD医師が膣形成し、全身整形し“女性”にしてしまった存在なのです。その“ベラ=ビセンテ”は実は娘を死に追いやった原因、だけど愛する妻の顔を持たせたがために、いやおうなしに“彼”に惹かれてしまうロベル医師。なにこの倒錯。まさにただしく“倒錯”、ただしく変態映画!
恋と変とは似ているけど非なるもの。ロベルはもうぐっちゃぐちゃでワケわからなくなってる。妻への恋、娘への愛、そしてそれらを失った喪失感、復讐心を満たしたい欲、でも復讐相手に恋する気持ち…ごっちゃごちゃで入り混じった結果至った倒錯。その迎える結末はおかしいような哀しいような。だってベッドで「はやくはやく!」と“ベラ=娘を死に追いやった男ビセンテ=妻の顔をもち人工的な膣とヒトを超えた完璧な皮膚をもつ改造人間”をせっつくロベルは性欲の盛んな男子高校生と変わらんですよ、その直後にロベルが迎えるあの結末、おかしいやらなにやら。そしてロベルというジャマな存在を消したのち“彼”の取った行動は…童話のプリンセスがやっと自分の居場所にもどったハッピーエンドのような感じ。これもよかったような不思議なようなヘンな感じ。全編にわたってこのヘンな感じがつきまとうユニーク映画。興味がある方はゼヒに。エンドロールの超高級ブランドの名前の延々と続く羅列をみて、「うぉ、あの切り裂きまくってたワンピもゴルチエかD&Gかグッチかmiumiuとかの超高いやつなんかい…」とまた感心すること必至ですよ。
『私が、生きる肌』(2011/スペイン)監督:ペドロ・アルモドバル出演:アントニオ・バンデラスエレナ・アナヤ、マリサ・パレデス、ジャン・コルネット
http://www.theskinilivein-movie.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD20730/index.html

そして結論=自分の心だけは誰にも犯せない…ヨガの教え深いすな。
中盤のパーティーシーンで出てくるヴォーカリストがすばらしいすきっ歯な女性でした

オール・アバウト・マイ・マザー [DVD]

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これは再見して、かなりいい作品だな、と思った。初見のときにわからなかったことまで響くようになったという感じ。歳をとってわかるようになることもある。

*1:独特であり、他と異なるというオリジナル性を有するという意味+おかしみもある、っていう

*2:鉄腕アトムとかも思い出すね

*3:というかこの映画2011年の作なのに“現代”の設定が2012年と微妙に近未来なのですよね

*4:未遂かも?