『ワン・デイ 23年のラブストーリー』

予告を見てとても観たくなったのはアン・ハサウェイのショートカット姿に惹かれたから。観に行って、アン・ハサウェイの魅力は思ったとおり堪能しましたが、意外にもイギリスが舞台なのがうれしかったな。
1988年7月15日。大学の卒業式の日、飲みあかした翌朝、たまさかふたりで過ごしたエマ(アン・ハサウェイ)とデクスター(ジム・スタージェス)。寝てもおかしくない状況だったが、たまさかそういう関係にはならずに、かわりに二人は親友になった。その運命の7月15日から23年間をそれぞれの7月15日を切り取ることで二人の人生を追っていく。二人は互いに惹かれながらも一線は超えず、親友同士として人生を歩んでいくのだが…
エマとデクスターは性格も嗜好も異なる感じ。エマは地味な詩人志望。デクスターはチャラいふわっとした優男。正直、デクスターにはそんなに魅力を感じられないよ。だって、エマは夢見る文学少女がそのまま大人になったみたいだけど芯が強くて、夢をあきらめずに自分を貫いている。一方デクスターは超軽薄な(いわゆる時代に追従してる感じ)司会者としてふわっとしった人気者になる。でも実力は伴わないふわっとした人気者で、いかにもバブルな感じで調子にのってパーティ三昧とかアホそうなモデルとイチャついたりとか…で余命わずかな母に「もっと礼儀正しくていい人間になってほしいの」とたしなめられたり…でもデクスターが“何をしたい”のか全然わからない。だから全然魅力的にみえなくて。でもそもそも“とくに何ら具体的な夢や目標はないけど、なんとなく上手く生きていきたい”人なんだろうな。チャラチャラと華やかそうで充実してそうに見えるけど、からっぽさを抱えてるデクスターは夢を持っている芯の強いエマに惹かれるのはそういうわけだろうな。彼には彼女が必要なのである。それほど大事だから、ほかの女性とちがって軽く付き合えないというわけか。
じゃ、エマはなんでデクスターに惹かれるのかというと、それは(多分)一目ぼれして、内面も知らぬまま夢中になり片思いをしてきた、というわけだから、顔とかもろもろ全体に惹かれたんだろうよ。恋をするのに理由なんてありません。入口はルックスだったり雰囲気だったり…それで、彼の優しさや弱いところを含めてどんどん好きになってしまったのでありましょう。理由はわからぬけど、タイミングやなにかの積み重ねで、この人でないとしっくりこないな、と思うような。なのに、茶化してしまったり、自分で自分にブレーキかけたりして、互いに違う相手と付き合ったり…傍からみてたら「なんだよもうじれったい」と思うけど、恋愛もなにもそういうちょっとした偶然の積み重ねで思うようにいかなかったりするものよな。
エマのキャラ頼りの映画だな、という感じでした。だからエマが不在になってからのデクスターのアレな感じとかは愛する人を失ってその喪失感はさぞかしであろうぞ、とか思うけど、その後の再生でオーガニックな感じのウッディなカフェ的レストラン(かもめ食堂か…?)をやってて、アレ?そんなキャラだっけ?みたいなちょっと粗いところがあったな。でもこれ原作者がシナリオ書いてるからなー…
お話は粗いんだけど、結構よかったところもあって。それは『17歳の肖像』のロネ・シェルフィグ監督の手腕かな、と感じました。ちょっと90年代のマドチェスターが全盛の頃の風俗の片鱗の描き方や、イギリスのロケーションを生かして主役のふたりを魅力的に見せたりね。『17歳〜』との共通点といえば、ちょっとフランスを舞台にするシークエンスがあるところもそうだな。とくにフランスでのアンちゃんのショートカット姿がすばらしくキュートでありました。
あとはね、ラスト近く、不仲であった父がエマを失ったデクスターに「エマが生きていると思って生きていってはどうだ」というところ。「それはムリだよ」というデクスターに父は「私はもう10年もそれをしてるんだ」というところ。あぁ、そう、世の中の大部分の人は、そういう経験していてそれでも生きているのだからな、と思う。そしてそのような愛しい存在がなれければそんな深い喪失感もないんだろうけど、それでもそれだけ愛しい人がいてこそ、生きる喜びや生き延びる強さも得られるのであろうな、と思ったりも。
イギリスのhill(丘)が出てきたり、石造りの街並みなどのロケーションもうれしいし、ラストで運命の出会いの一日にさかのぼるところもよかった。ヘタうつとどうしようもない作品になりかねなかったところ、ロネ監督だからこういう演出になったんじゃない?と思い監督の次作もゼヒ観たいなぁ、待ちたいなぁ、と思ったのでした。
『ワン・デイ 23年のラブストーリー』(2011/アメリカ)監督:ロネ・シェルフィグ 出演:アン・ハサウェイジム・スタージェスパトリシア・クラークソン、ケン・ストットほか
http://oneday.asmik-ace.co.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD21040/index.html

ジム・スタージェスは甘いルックスがこの役にはあってると思った。久しぶりにみたなぁ『アクロス・ザ・ユニバース』がいまだに代表作かな。ワカモノ向けチャラい番組の司会から、30代になって飽きられてコドモむけゲーム番組の司会者に落ちてるのがすごいリアルだった。あれはイギリスでいうテレ東のゲーム番組の司会的ポジションか…?