カナザワ映画祭2012行ってきました:2012/9/16(Sun)

昨年初めて行ったカナザワ映画祭。帰ってきて荷ほどき、洗濯もろもろ終えてとりあえず映画祭〜旅行記を書くとする。今年のカナザワ映画祭のテーマは『SEX爆音』(改めて書くとすごい響きだ)。自分は知らないのだけれども、一世風靡したらしいスウェーデンのクリチナ・リンドバーグ特集を中心にエロス満載映画が爆音上映だよ。14日の香林坊にぎわい広場での前夜祭(『ショーガール』)から始まるのですが自分が参加したのは16日(日)、17日(月)でありました。
ツイッターを覗くと『ウォーターパワー』の上映で盛り上がっているようでしたが、自分はその日3本目の爆音上映『バタリアン』から参加です。これは東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵の35ミリフィルム。フィルムの状態がよくてきれいだったな。しょっぱなの“これはすべて事実である”の字幕にズッコケた。80年代ぽいなぁ、やるなぁ。ホラー×ロックなナンバーの相性の良さとノリのよさが爆音上映に映える!あとは今なら許されないだろう暴挙に笑わせられた。とっつかまえたバストアップのゾンビに「Do you hear me?*1」その答えは明らかに「Yes」なのに、字幕は「お前は誰だ!」「オバンバ」て。オバンバ、て。ほかにも何の前フリもなく「タールマンがいたわ!」とか「バタリアンが来るんだ!」とか。当時ゾンビに日本的適当な固有名を与えて宣伝していたから、当時の観客は素直に受け入れてたんでしょうか。今なら映画クラスタが黙っちゃいないだろうけど、ある意味のんびりした時代であったというか、映画ってのが、今よりずっと大衆のための映画、という存在だったんだろうな。大衆に分かりやすいよう宣伝うって、タイトルつけて…そう、タイトル!今作の原題は『The Retuen of the Living Dead』なのに、なんで『バタリアン』やねん!バイオSFホラーってなんやねん!それも含めて80年代っぽい。映画内ではロメロの『ゾンビ』にならって頭を破壊すれば死ぬだろうと攻撃するけど、それでもダメっていう最強ゾンビで「映画と違うよ」って、登場人物が嘆いてました。ほかにもダッシュして猛タックルを見せるゾンビなどいろんなゾンビもいるし、チープな感じや裸をだしとかなきゃ、とそういう人を配置したり、行き届いたエンターテイメントっぷりを堪能しました。あ、いやこれ事実なんだった、いやぁアメリカにこんな事実があったとは知らなかったよ。

続いては『異常性欲アニタ』(無修正版)です。これは終わった後に柳下毅一郎さんとクリスチナさんのティーチインもあるという豪華版!35ミリフィルムでの爆音上映ですよ。英語/日本語字幕verです。クリスチナさんの肢体のすばらしさとその童顔に、日本で人気を博したのもなるほど、と納得です。あどけない表情なのにスタイル抜群。ただ小柄な感じでそれも日本人受けしそう。あとは、無名時代のステラン・スカルスガルド!これはスカルスガルドだと分かって観てたから彼だと分かったけど、そう知らされてなかったらわからないほどの美青年っぷりでした。細い細い腰にしなやかな動き。目や鼻に後年の面影はあるけど…当時のスカルスガルドはちょっとトム・ヒドルストンっぽい感じもあったな。お話は当時の風俗をよく反映してるらしいところはあるけど、辻褄とかストーリーといわれると、それはちょっと苦しい。無理やりな展開やこういう場面を入れるために、とストーリーはガジェットやクリスチナさん、当時のステキなファッションや髪型などを楽しむ感じだったなぁ。あとクリスチナさんの脱ぎっぷりに比して、スカルスガルドのほうがアイドルみたいになにか守ってる感じだった。

柳下毅一郎さんとクリスチナさんのティーチインは前日にもあったのですが、そこでの話題は彼女が来日して撮った映画の話が主だったようで、2回目のティーチインではスウェーデンでの彼女の活躍について聴いてましたね。当時はフェミニズムの運動も盛り上がりつつ頃だったようで、フェミニストからはダーツの的に彼女の写真が貼られるほど敵視されたりもしていたようです。今年62歳になる彼女はスタイルもよくて、胸元がチラリの服もセクシー、変にアンチエイジングしてない自然体な感じがすごくステキだったな。そして続いて上映される『ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ』の話題に。カラテやガン・アクションの練習もあって大変だったとか。あとゲリラ撮影で、勝手に警察車両風にペイントした車を走らせてて、警察につかまったとか(でも監督は逃げててクリスチナさんがつかまったとか)。極め付けのエピソードは、cruel filmを撮るぞ(原題は『Thriller:A Cruel Picture』と意気込んでたからか、監督が主役の彼女が隻眼になるきっかけの場面を、医師に頼んで自殺した少女の遺体にメイクをほどこして撮影したとか…これは監督は否定してるけど、本当だ、とクリスチナさんが言ってましたね。ちなみに2verあるらしく、ひとつはその衝撃のシーンありもうひとつは無いのかな。さて、映画祭では流れたのはどっちかというと…
クリスチナさんが「タランティーノはこの映画をとてもcruelだというけど、私はそうは思わない。タランティーノのほうがもっとcruelな映画を撮ってるじゃない」と言っていましたが、とにかくcruelでcoolで斬新でしたよ『ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ』。幼き頃に近所のじいさんから受けた性的いたずら?が原因で口がきけなくなった少女が主人公。彼女を溺愛する両親によって、治療に街へ通わされていたのだが、ある日バスに乗り遅れた彼女は送ってあげよう、という男の車に乗り込むのだがそれがすべての悲劇のはじまりだった…上映はデジタルでそれだけに字幕はカクカクしてましたが、なんといってもcruelな場面がノーカットのバージョンですから、文句はなしですよ。タラの『キル・ビル』のエル・ドライバーの元ネタということで有名ですが初見。やたらポップでキュートなスウェーデン・インテリアの部屋で鬼畜なことが展開されます。さらわれた彼女はヘロイン漬けにされて、売春を強要される。同じ仲間も自殺し、彼女の両親も彼女からの縁切りの手紙(クスリの効果のあるときに書かされたのかな)にショックを受け自殺してしまう。復讐にむけてカラテ道場や銃、クルマの個人レッスンに通う彼女。カラテのレッスンのアレ?な感じもご愛嬌。着々と技術を身に着けるわけだけど、そのためにお金がかかる…チップ目当てに体を売る。その場面のヘンテコな感じも不思議だったな。やたら局部の超拡大画像*2を不可思議な電子音ミュージックにのせて見せられる。そのうち笑えてくるくらい何度も繰り返されてシュルレアリスティックな何かか?とさえ思わせられるほどであった。やがて、技術を身に着けた彼女は復讐を実行にうつす。それが、まず一人目の犠牲者が彼女の常連客ってのが意外だった。まず女衒のヤツをやっつけるのかと思ってたので。これは、幼少期の彼女に口をきけなくなるほどのショックを与えたのと同じく「彼女を欲望の対象の道具としかみないような男」を最初のターゲットにしたということかな。ここからは黒のトレンチコートに黒のボトムに黒のアイパッチと黒づくめの彼女がショットガンを放つ!カラテの技を炸裂させる!かっこいいですよ。しかもここでも超絶スローモーション・アクション・シークエンスがいいですよ。不思議だけど、うわぁ口があんぐりあいて見入ってしまう感じ。これは不思議な局部接写シークエンスにどこか似てる不可思議さだな*3。現実離れしたふわりとちょっと浮いてるような不可思議世界。ラストも何か仕掛けしたと思ったら、ネコだまし的花火とか、どこからともなく現れる馬とか、予想外すぎた。クリスチナさんのビジュアルが、ピンクの衣装のときはピンクのアイパッチ、とか赤の衣装のときは赤アイパッチとちゃんとコーディネートしてるもステキだったし、お話やアクションシーンもおもしろかった!
(付記)翌日のシンポジウムでカナザワ映画の会代表小野寺さんが、『ゼイ・コール〜』の監督はタランティーノが今作を評価したので、この映画が金になる、とわかって、ネット巡回してどっかで上映をやると知ったら、お金を要求したりするらしく、カナザワ映画の会にもそういうattentionメールがきたとか…。クリスチナさんのマネージャーさんに助けてもらったりして大丈夫だったみたいですけどね。
こうして満足して、1日目は終了したのでした。

・食べたもの 金沢駅でやってたカレー&スイーツフェアで買ったカレーとジェラート。魚づくし料理。

*1:Can you〜かも

*2:多分クリスチナさんじゃないと思われる

*3:どこか笑えるところといい