2012年に観た映画をふりかえる:その1(1〜30位)

暮れゆきます2012年。去年に引き続き全作品をふりかえってみますが、あまりに長い記事になりそうなので、とりあえずベスト30まで。ベスト上位30はほぼベスト10扱いです。どれもこれもおもしろかったし、鮮烈だったり、痛かったりしたなぁ、と。それでは参ります。まず1〜10位。
1、サニー 永遠の仲間たち

完璧な作品ではありません。でも心に響いた。キャストも最高ですしベタなお話もいい。それは演出がいいからなんだよな。カメラがくるりと回ると、一挙に学生時代の回想になるシーンの巧みなこと。映画を観ることの至福を感じたのでした。
2、As Luck Would Have It

アレックス・デ・ラ・イグレシアの新作をラテンビート映画祭で観られたこと、そしてそれが傑作だったこと…偶然に出会えたことの幸運。まったくの予備知識がなかったこともあって「この作品はどこに連れて行ってくれるんだろう」と息の抜けない2時間弱。いのちの輝きと皮肉と愛とお金や打算や情etcがない交ぜになった傑作。ぜひ一般公開してほしい。
3、ファミリー・ツリー

じわじわじわじわくるいい映画。ロケーションも丁寧なストーリーや演出も見事。ラストが本当にすばらしい。
4、高海抜の恋

ジョニー・トーがルイス・クーとサミー・チェン、という最高のスターを主役に据えたラブコメ。これが最高の仕上がりで、ベタなんだけど、いい!ベタな劇中歌とかも泣かせるし、サミーもキュートだし、映画愛にもあふれている秀作。アジアン映画祭で観られて大満足。一般公開は…難しいかなぁ。
5、桐島、部活やめるってよ

2012邦画界を代表する作品。繰り返される一日。日本映画でこの空気感をパッケージできたこと、それをリアルタイムで劇場で体験できたこと。ゾンビ映画はどうしてこうも人を惹きつけるのかなー。死ぬな!よみがえれ!生きろ!生きているかぎり、終わりなきこの日常を生ある者として生きろ!ってメッセージが惹きつけるのかもしれぬな。前田たちもそういうのに共感してるのかなぁ。
6、ヤング≒アダルト

これも痛い映画だった。しかし、女王は女王として生きるしかないのだ。胸を張って顔をあげて、さぁ行け!涙の痕はそのままでも、汗ジミのある服もそのままに、クルマもぶつけてボコボコだけど、さぁ行け!
7、007/スカイフォール

贅沢な画づくり。ハビエル・バルデムの顔芸も楽しめるし、エンタテイメントとして最高ですよ。大きい画面で観ると殊更ですね。アニマルズを轟音でかけながらの登場とかもたまらぬ迫力。TVサイズで観たらもっと下の順位にしたかもしれぬ。
8、私が、生きる肌

変態映画。しかも超高級な画づくりで全力でやられちゃあ、もうなんだか圧倒されるしかないじゃん。観たことないもの観せてくれる正しいあり方の映画。
9、孤島の王

ステラン・スカルスガルドが最高であるし、なにより少年どもの面構えよ。静謐な雪に閉じ込められた島での少年たちの反抗。もっといい画質で観たかったなぁ、とデジタル上映問題も感じましたね。
10、ドラゴン・タトゥーの女

007もすごかったけど、こちらのOPも相当なかっこよさ。フィンチャーの画力を見せつけられたし、編集がかっこいい。雪とステランの相性の良さったらないですな。ルーニー・マーラもかっこよかったです。ちなみに今年のベスト予告編は今作で決定です。
では11〜20位。これもほぼベスト10と同じ。
11、ダークナイト・ライジング

思えばつっこみどころ満載だけど、音楽も最高の仕事、ハッタリや空気感ふくめて、あー娯楽映画観た!という満足感を得られたよ。3部作丸くおさまってよかったなぁ。キャット・ウーマンも大変美しくて満足でありました。
12、ビースト・ストーカー/証人

公開されてよかったなぁ。ダンテ・ラム監督作。冒頭のカーアクション、そして業の深さを背負うそれぞれの人物。ニック・チョンもニコラス・ツェーもいい面構え。それぞれ苦悩を抱える人物の運命が交差する秀逸なストーリーテリング。おもしろかった!
13、星空

アジアン映画祭で観ました。絵本が原作なのですが、その世界観を見事に映画化しているファンタジー。こどもと大人の中間。思春期の揺れ動き傷つきやすい多感な時期の妄想や夢や希望、そして辛い現実…。全てのかつて思春期だったひとたちに観てほしい。一般公開は……むりかなぁ
14、おとなのけんか

これ、本当に完璧。今年観た映画のなかで最も声を出して笑ったと思う。腹から笑った。冒頭からエンドロールまで仕上がり具合が半端じゃない。キャスト4人が本当に最高。ま、ゆうてもクリストフ・ヴァルツがなにはともあれ最高なんですけどね!
15、裏切りのサーカス

ハイブロウ!高級な仕上がりの絶品ワインみたいな大人さ。自分はチョコレートボンボンで酔うような人間なんで、ああいう世界に入ったり、触れることはできないし到達できないからこそ、憧れるなぁ。役者もカメラも編集もインテリアもなにもかも極上。
16、ルルドの泉で

レア・セドゥが出てる時点で何割か増しになりますよ。そのうえ、このひねくれた展開。たまらぬなー。ルルドの奇跡は足が萎えていた女性(祝ベスト巡礼賞受賞)に本当に起こったのでしょうか?…さぁ、気になる人はぜひレンタルででも観てみましょう!
17、ミラノ、愛に生きる

最高のティルダ・スウィントン。大仰な音楽!雰囲気!草上の幸福な裸体をなめるようなカメラワークのすばらしさ!ヨーロッパ産の映画らしい映画を観たという満足感。
18、ミヒャエル

いやぁないやぁな感じがたまらぬ。ミヒャエルの立ち姿、顔、髪型すべてが、もう、言葉にできない…。そんなルックスのミヒャエル、おまえならそんな非道なこともするよな!という悪魔の所業。ハネケの血筋を感じるいやぁな、でも、じわじわ心に入り込んでくる…つまりいい映画!そして今年自分1位にした映画のあの曲がこんな風に使われるとは、という驚きでニヤニヤしてしまった、という意味でも味わい深いのです。
19、少年は残酷な弓を射る

これもじわじわ来る映画。まず冒頭のトマトまつりの鮮烈な赤!画面構成や色づかいのセンスがすばらしかった。ティルダ・スウィントンの存在感とエズラ・ミラーの不遜なつらがまえ。小さいケヴィンの面構えもすばらしかったのな。
20、シスター

これまたレア・セドゥ主演のスイスが舞台の映画。団地のまずしい暮らしという意味では『フィッシュ・タンク』を思い起こさせるような。ヨーロッパ映画祭で観ました。ぜひ来年の三大映画祭週間とかでとりあげてほしい秀作。
では21〜30位。これもやっぱりほぼベスト10クラス。
21、気狂いピエロの決闘

アレックス・デ・ラ・イグレシアの作品。昨年のラテンビート映画祭でかかった作品を三大映画祭週間で観られました。とちくるってて本当に狂ってて、でも悲恋物語でサーカスで復讐で…ごった煮の極才色の絵巻物。好きです。画も大変いいよ。
22、捜査官X

文系な金城くんもよかったし、ドニーと片腕ドラゴンはすごかったなぁ。冒頭のアクションシークエンスのすばらしいこと。屋根を走るドニーの画のすばらしいこと。アジアン映画祭のプレミアで観たのも思い出深いです。
23、トガニ 幼き瞳の告発

エンターテイメント映画としてよくできていながら、問題提起もするっていう。悪人が悪人らしく悪人すぎるけど、その悪人っぷりがすごすぎたね。今作の双子は映画史上に残る双子ではないでしょうか。
24、盗聴犯〜死のインサイダー取引〜

チンワン、ルイス・クー、ダニエル・ウーという豪華キャスト。ルイス・クーが持って行ったなーという感があるけど、過剰さとアクションと派手さと因果応報という香港映画らしい香港映画。大満足。
25、盗聴犯〜狙われたブローカー

チンワン、ルイス・クー、ダニエル・ウーという豪華キャストによる盗聴犯シリーズ第二弾(しかも主要3キャストが同じなのに第一弾とは全然話がつながっていないという斬新なシリーズ)。カーチェイスが秀逸。ダニエル・ウーが大変かっこいい役でありました。ほっこりいいところに着地するのもいい。あとはラウチンの顔面力!
26、ライク・サムワン・イン・ラブ

うぉぉ、なんかえらいもの観た!という感じ。観終えて客席が「ここで、これで、おわり?」という空気が充満して不思議な一体感を覚えたほど。今作の加瀬君は必見です。そしてこの加瀬君が気になったら『海炭市叙景』もあわせて観てほしい。
27、テイク・ディス・ワルツ

観終えて「これはまたおそろしい映画だ」と語り合ったものです。セス・ローゲンの鶏料理食べたいなぁ。セスとミシェルの夫婦のじゃれあいがすごい。キレイな画づくりもすばらしいし、あの遊園地でぐるぐるまわるシークエンスと「ラジオスターの悲劇」は最高です。あとは『レボリューショナリー・ロード』でいえばマイケル・シャノンがやっていたような役回りをやっていたセスの妹役もよかったね。
28、桃さんのしあわせ

ゲストは豪華なのに、さりげない。派手さはないけどそれだけにしみじみと感じ入らせる、いい映画。桃さんのタンの煮込み食べたいな。ネコもかわいかった。
29、高地戦

重量級戦争映画。韓国映画のいい顔揃い。戦争のうつろを感じさせる意味でも深く、秀逸。戦争映画のお約束的展開やフラグ満載ながら、飽きない、丁寧な演出。
30、プロメテウス

なんだかんだで、見世物的SFホラーとして最高でしたよ。あの手術台シーンとか、おいでおいでと手招きして食いつかれるところとか、いやぁ、冒頭のどやぁ、というナショナルジオグラフィック的な映像とか、筋肉もりもり男子が黒酢をのんで分子に分裂とか、アンドロイド=ファスなどもろもろよかったよ。
以上30位まではほぼベスト10扱いです。どれもこれもおもしろくて楽しんだ!
次の日記では新作でみたもの137本のうち31位以降(だからあと107本)の振り返りをしてみます。そのあとは旧作再上映など…しばらくは、ふりかえりシリーズで。