映画

理想を現実にするために『リンカーン』

まずはスピルバーグが映画のバックグラウンドを1分ほど語るところから始まるのに驚いたな。劇中はそこまでアメリカ史の知識のない自分には細かいニュアンスまでキャッチできないもどかしさを感じる箇所はあったし、日本人には馴染みはないけれどアメリカ人…

まばゆい世界『君と歩く世界』

宣伝チラシから予想していたた内容 シャチのトレーナーとして半人前からようやっと一人前になったところであるマリオン・コティヤール。これから仕事もどんどん楽しくなってやりがいに満ちていく…そんな矢先、とある一頭のシャチが野生に目覚めた瞬間、不運…

鮮烈なイメージの塊り『ザ・マスター』

ダメな方じゃないアンダーソンこと、ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作です。催眠的手法で、その人物の過去/ルーツに眠るトラウマを探り、現在の自分は“本当の自分”ではない、本当の自分をたどれば理想的な幸せを手に入れられる…それに気づかせて…

『偽りなき者』

主人公が窮地に陥れられる、というのは映画としては定番です。そんな“落ちる”要素があるから、“上がる”ラストはとてもカタルシスがあるわけし、そのままバッドエンドも一興かもしれませんし、苦い現実味のある後味もいいでしょう。 …それでも自分がとても苦…

飲んだくれカリスマ機長の“かみさま”『フライト』

デンゼル映画。『デンジャラス・ラン』につづき、デンゼルの劇中に映ってる時間:スクリーンのデンゼル占有率の高い映画なのですが、今回のデンゼルは飲んで飲んで酔って酔ってドラッグをキメてキメまくるカリスマ機長。腕は確かだが、プライベートは破たん…

共に生きてきた時間/愛『愛、アムール』

カンヌのパルムドール、また、アカデミー賞の外国語映画賞まで取ったという『愛、アムール』を観ましたよ。 ストーリーは極めてシンプル。とあるアパルトマン、鍵かけられた部屋をこじあける消防隊か警察か…部屋に入ると、臭いに鼻を押さえる―その匂いの元た…

第8回大阪アジアン映画祭:drug war!!『毒戦』

ジョニー・トー監督も今回の上映のためだけに来日した、ということで華々しく開幕した大阪アジアン映画祭オープニングの日本プレミア上映『毒戦』を見ましたよ。 スン・ホンレイ演じる捜査官!ポーカーフェイスで非情なまでにおのれの任務を全うすることにか…

『マーサ、あるいはマーシー・メイ』原題:Martha Marcy May Marlene

マーサは現実社会から逃避した、そして逃避した先からまた逃避した。逃避先で彼女に起こったことはなんだったのか。そして彼女は「原状復帰」できるのだろうか、かつての彼女となにかが決定的に異なる烙印を受けたように見えるのだけど、果たして… 説明セリ…

『世界にひとつのプレイブック』

たとえば、結構な枚数の書類をコピーしようとコピー機に行き、原稿送りのところに原稿をセットする。上から順番に紙が送られていき順調にコピーされていく。が、突然の異音とともに原稿はグシャグシャになり、エラーメッセージ。あぁ、ステープラーで留めた…

高潔さ 『ジャンゴ 繋がれざる者』

全編ジェイミー・フォックスがかっこよく、前半はクリストフ・ヴァルツが、中盤はレオが、後半はサミュエル・L・ジャクソンが持っていった映画。 タランティーノの映画のOPだな、と感じさせる曲、キメ画の連続、タイトルロゴなどに既におなかいっぱい。今…

ちょっとズレてる、おかしな、普通の人『横道世之介』

ネタバレて書きます。横道世之介。よこみちよのすけ。苗字4文字+名前4文字。「よ」の音が何気に韻を踏んでいて、「介」って響きがすこし古臭い、ちょっと印象的な名前。本人は(作品の舞台になった87年当時にはなかった言い回しだろうけど)“あんまり空…

『バチェロレッテ―あの子が結婚するなんて!―』(動揺するキルステン)

キルステン演じるレーガンは完璧なはずだった…のに。ブタちゃんみたいなベッキーがイケメンと結婚とは…!ブライズメイドとして高校のときのBeeグループが集まる。高校の人気者目立つグループだったほかのメンバーは…ケイティはくたびれた洋服売り場の売り子…

彼女の、仕事と人生/人生と仕事『ゼロ・ダーク・サーティ』

この1年は仕事と人生について、ぼんやり考えることが増えたりしたのです。生活に占める仕事の割合がかなりのパーセンテージになってしまい、職場を離れてもなお、仕事のことが延々と脳の一定割合を占めてとどまり続け気掛かりで頭を悩ませたり。お金がない…

金は天下のまわりもの『奪命金』

金は天下のまわりもの、なんだけど、均等に回らないのが困りもの、です。その金のきまぐれな巡り方に翻弄される人らを描く(群像劇までいかないけど)ジョニー・トー監督作は、期待を上回る見応えとおもしろさでした。 投資商品のセールスがまったくノルマ達…

チェックのシャツ+カーディガン男の夢想『ルビー・スパークス』

若くして書いたデビュー作が絶賛をもって世間に迎え入れられるも、それ以後作品が書けなくなっている神経症的非コミュ人間であるのが、ポール・ダノ演じるカルヴィン。人とうまく関われず、世話の焼ける犬(スコッティ)だけがともだち。カルヴィンとは正反…

人類皆きょうだい『人生、ブラボー!』

人の善良さを信じたくなる、あたたかい映画。悪い人は出てこない…うん、だからファンタジーですね、でも、ファンタジーに仮託することで、人間のよいところが具体性を伴って描写もできる。 主人公ダヴィッドはダメダメな奴だ。42歳、独身、だらしない、仕…

『アルバート氏の人生』

マジメで気配りができ、つまりウェイターの仕事が天職ともいえるほどぴたりとこなせるアルバート・ノッブス。しかし小柄な彼はどこか風変り。人との関わりが浅い。どこか心の奥を見せない。ハンサムとは言い難くルックスもどこか奇妙。彼の抱える秘密とは… …

未体験ゾーンの映画たち2013『バーニーズ・バージョン ローマと共に』

昨年もあった“ほぼDVDスルー扱いなんだけど、一応「劇場公開作」って冠をつけるためにやってるのか”型特集上映。昨年は、同枠でかかったとある作品を「今をときめくゴズリングとキルステンの共演するサスペンス!でも邦題がヤバそうかも…」と思いつつ期待…

未体験ゾーンの映画たち2013:今年推したい作品暫定ベスト『ザ・ウォーター・ウォー』

これは面白かったし、かなりズシンときた。映画製作の裏側と撮られる側の関係性、ボリビアの水戦争/西欧の大企業が如何にボリビアのような“第三世界”をグローバリズムにおいて食い物にしようとするか、そして映画内映画で語られるコロンブスによる大陸の“発…

彼の口から語られる物語『ライフ・オブ・パイ』

ネタバレて書きます。 物語の効用。癒すこと。厳しい辛い直視するのがしんどい真実は奥ふかくに隠して、やわらかくふわふわと面白いもののように砂糖や装飾でくるみこんでしまう、寓話のように。そんな甘い甘い物語に人は夢中になる。この話はどうなるの、先…

大人になるには『テッド』

ジョン少年には小さい頃、友達がいなかった。それで切に願う「このクマのぬいぐるみが喋って、ぼくの一番の友達になればいいのに」。その願いの純粋さと流れ星の落ちるタイミングがピタリとあったとき、ファンタジーが具現化する。中に綿の詰まっているテデ…

ホン・サンス恋愛についての4つの考察

観ました。ホン・サンスは好き嫌いがぱっきり分かれると思いました。ある意味雰囲気映画っぽいしな。さて自分の嗜好的にはどうだろう。上映された4作は↓(観た順) 『よく知りもしないくせに』『ハハハ』『教授とわたし、そして映画』『次の朝は他人』 http:…

路地に生まれて死んでいくもの『千年の愉楽』

舞台挨拶つき先行上映に行ってきました! 原作はむかしに読んで、中上健次の中では一番好きだったという印象を抱いたことを覚えている作品…細かいところは覚えてないけど(スミマセン)。でも、観ていくうちに原作のことも段々思い出してきて、小説とは異なるけれ…

All You Need Is Love『LOOPER/ルーパー』

前評判が高かったし町山さんの昨年ベストでもあった今作。さてどんなのものかな、と初日に行きましたよ。ネタバレあり感想。 設定は近未来。ID管理や追跡が厳重になったため、死体処理の困難な未来から非合法にタイムループをつかって送り込まれる人物をルー…

大友克洋監修『MEMORIES』(1995)

塚口サンサンシアターは昨年から旧作上映を積極的にされてるのですが、ラインナップがユニークです。デジタル未導入なりにフィルム上映館であることを強みにしようとして挑戦中なのでしょう。昨年も『AKIRA』『ヘドウィグ〜』『パプリカ』など観に行ったので…

2012年12月に観た映画をふりかえる

2012年12月に観た映画一覧。まとめておくよ。 タイトル 映画館 ひとことメモ 値段 高地戦 元町映画館 2秒の意味するものは 1,000 思秋期 シネリーブル神戸 人の業とは 1,000 007/スカイフォール TOHOシネマズ西宮 空がおちても パスポート ウーマン・イン・ブラック…

冬の香港映画祭り『大魔術師Xのダブル・トリック』『狼たちのノクターン』

これを観なければ冬は越せない!ということで行ってきましたよ。3本中2本の鑑賞です(今回は『最愛』はスルーいたしました、気にはなりましたが…)。客層はいかにも香港映画ファン、といういい感じです。 http://www.cinemart.co.jp/theater/special/hongkon…

2012年に観た映画をふりかえる:その3(旧作再上映ほか)

※旧作ふりかえりイメージキャラクターのパプリカちゃんです。昨年、新作以外に観たものふりかえってみます。【旧作再上映】順不同 1、こわれゆく女:カサヴェテス特集上映。すばらしい!ピーター・フォークもジーナ・ローランズも最高。 2、ラブ・ストリー…

2012年に観た新作映画を全部ふりかえる:その2(極私的全ランキング)

すべてベスト10扱いとしたいベスト30は先日の日記にまとめました。 ↓ http://d.hatena.ne.jp/yosinote/20121227 先日の日記を書くためにベスト30の各作品の画像を集めたのですが、楽しい作業だったな。各作品についていくつか出てくる画像のなかでもお…

2012年に観た映画をふりかえる:その1(1〜30位)

暮れゆきます2012年。去年に引き続き全作品をふりかえってみますが、あまりに長い記事になりそうなので、とりあえずベスト30まで。ベスト上位30はほぼベスト10扱いです。どれもこれもおもしろかったし、鮮烈だったり、痛かったりしたなぁ、と。それでは参…