『まほろ駅前多田便利軒』

5月1日は映画の日で日曜日。というわけで映画館は激混みでした。色々観たい映画はありましたが、移動のロスなども考えて同じ劇場でやっていた『まほろ駅前多田便利軒』と『八日目の蝉』を選択しました。今日は『まほろ(以下略)』について書いてみます。
昨年の撮影中から情報が小出しに出てきていましたが、“瑛太&松田龍平の主演映画で、音楽はくるりの岸田君が担当”というのを見て、“センスのいい感じのキャストに、わかってる感じの音楽”という「イメージ先行雰囲気映画…なのか?」と思い、観に行くリストに入れてませんでしたが、twitterの自分TL上で評判がよさそうなので映画の日に行ってみるか、と。いやはやtwitterのおかげで色々スルーできない映画が増えました。
一言でいうなら、とにかく松田龍平がかっこいい。この人ならユニクロ上下でもなんでもかっこいいに決まってる(断言)。松田龍平が演じるからこそ、根無し草の、いわくありげな、飄々として、どこか悟ったような、こいつにまかせとけば大丈夫かも、と思わせられてしまうような役がイヤミにならない。彼は本当に映画に愛されている人だな。多彩な表情ではないけれど、ふと表情が変わる瞬間に、観る者にはっとした印象を与えられる、その立ち姿だけで十分な存在感を持つ。さて映画本篇はというと…

試合 対戦カード 試合内容 勝者
第1試合 瑛太vs龍平 便利屋の多田(瑛太)が中学生の同級生だった行天*1(龍平)と出会う。ここで、行天の人を引きつけちゃうオーラで多田が巻き込まれ側になる。 龍平が瑛太を巻き込む側。行き場のない行天は瑛太ん家に居候までしちゃう。龍平の勝利
第2試合 瑛太+龍平vs夜逃げ母子 夜逃げのため連れていけないチワワを母親が便利屋に押し付け逃亡。瑛太の機転で住所を突き止めるが、最終的には龍平が知恵を働かせて子どもを呼び出し、話ができたことで、ケリがつく(瑛太が一時預かりし次の飼い主を探すことに)。 龍平が最もおいしい役をもってく。子役はいかにも“こなれ過ぎた子役演技”、龍平はその場の空気を完全に自分のモノにして自然に存在している感じ。総合的に龍平の勝利
第3試合 瑛太+龍平vsたちんぼ(片岡礼子鈴木杏 チワワを飼いたいたちんぼ女たちのケバい化粧+露出度の高い衣装、自称コロンビア人ルルを演じる片岡礼子の底力演技に押され気味の瑛太 自然すぎる片岡礼子の勝利。彼女には抗えない(杏ちゃんもがんばってた)
第4試合 龍平vsルルの男(松尾スズキ 白い粉を取りに来た松尾スズキ。龍平にタバコの火で脅しつけられて、強気から一転負けに転じる。みにくい捨て台詞を残して退却する小物ぶりの徹底、さすがのスズキクオリティ どちらも一歩も引かず。龍平、スズキのドロー
第5試合 瑛太+龍平vs少年 子どもに関心なさそうな母と息子の母子家庭。母からの依頼で少年と接触することになる二人。孤独で生意気で大人びた言動を取ろうとする少年。少年の演技は、結構よかったよ。 少年の家で『フランダースの犬』をごくごく自然に見ちゃってる龍平の勝利
第6試合 瑛太+龍平vsインテリヤクザ 子どもを使ってヤク売りさばきをやっている、インテリヤクザの星(高良健吾)。若いけどキレ者、という役どころだけど、電話の会話だけで解決… 瑛太演じる多田の過去の因縁をのぞかせるような子ども好きキャラとおせっかいな優しさ人間力炸裂で瑛太の勝利
第7試合 龍平vsヤバい人 鈴木杏ちゃん演じるハイシーに惚れちゃってるヤバい男山下(柄本祐)。彼から杏ちゃんを守ろうとして、わざと嫉妬心をあおり、憎しみを自分に向けさせる龍平。キチガイに刃物で危険状態に ヤバい男に柄本祐、いやぁ、いい顔してんな。しかし龍平が飄々としすぎでかっこいいので龍平の勝ち。柄本祐、今後いい役者になりそう。
第8試合 瑛太vs龍平の元妻 元妻を演じるのは、本上まなみさん。嫌いではないけど、演技がどうも苦手なタイプ。どんなシーンでも“本上まなみ”として存在してて、場面に馴染まない感じをうけてしまう。柔らかい空間に石柱が微動だにせず立ってる、みたいな…(個人の感想です)。龍平の自然さに比して、ちょっと固い感じのこの人が元妻というのもな*2 ここのシークエンスちょとつらかった。というわけで試合成立せずノーカウント
第9試合 瑛太vsインテリヤクザ 高良健吾が凄みを出す演技、なんだけど、声にちょっと凄みがまだないかなぁ。『南極料理人』で気弱な役やってたこと思い出したり。 高良さんには今後に期待、というわけで瑛太の勝利
第10試合 瑛太+龍平vs岸辺一徳 岸辺さん。刑事役なんだけど、もう岸辺一徳としかいいようがない役じゃない。岸辺さん出す時点で反則というか、それでなんか納得させられてしまう感が…地味に岸辺さんの隣にいた『海炭市叙景』にも出てた役者さんがいいので、今後は彼のような人にどんどん出てほしいな。 これは岸辺一徳が出た時点で、試合成立せずノーカウント*3
最終試合 瑛太vs龍平 瑛太の過去吐露。龍平の受動、やさしさ。瑛太のやりきれなさ。うん、いい勝負 ドロー!

トータルでやっぱ龍平の勝ち、自分的には。あとは片岡礼子鈴木杏松尾スズキ、柄本祐もツボでした。キャスティングのある種のやりすぎ感があると役者のオーラ頼りの映画になって客を選ぶし、内輪ウケ的ノリになりかねないんだけど、これはギリその陥穽にはまらずにいたのがよかったです。あと、人を信じている映画でした。素直に人間を信じている。そこがさっぱりしたさわやかな感じを覚えた所以か。ま、ちょっと龍平がミステリアスすぎたり、親からの虐待設定もすこし生かしきれていなかったり、ちょっとできすぎな人な感じはしたけど、でも、龍平の勝ちだからしようがないか。
まほろ駅前多田便利軒』(2011/日本)監督: 出演:瑛太、松田龍平
http://mahoro.asmik-ace.co.jp/intro/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17787/

※そういや、地味に大森南朋麿赤児が親子で出演してたな(劇中は親子設定でなく、同じ場面はなかったけど)
※小説を映画化すると要素の盛り込みが多くてなかなか消化しきれない、というのはあるとは思う

*1:ぎょうてんと読みます

*2:元妻とはいえ特殊設定ではあるけど

*3:一徳は好きですよ