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『ヒミズ』

映画

今作を観て『恋の罪』でも感じた、園監督の“作家性”に自分が合うか合わないか、というレベルで彼の映画についてはっきり評価が分かれるのだろうなという思いが強くなりました。役者陣はみな熱演だし、とくに主役:住田を演じた染谷将太はいいな、と思いつつ、劇中の人物たちによって交わされるセリフが自分のなかに入って来ず上滑りするようでした。(ちなみに原作未読なので、映画だけ観ての感想を書きます。)
まず二階堂ふみ演じる茶沢さんの造形が自分にはダメでした。部屋中に住田君のコトバを書いて貼りまくり、住田君につきまとう。住田君にイヤなことされたときに彼への憎しみの石をひろい、その石がたまったら投げつける、と叫ぶetc…不思議女子、孤独な少年を救うおせっかい且つ少年に好意を持っている天使。…“理性でなく感情で動いてしまうような生き物”であると同時に“男を補佐/補完する存在”というイメージでもって女性キャラの造形をし脚本を書いているように感じてしまった。金切声で叫び、感情的で勝手な行動を取り、観ているものをイライラさせる女性像は『恋の罪』で感じたのと共通している。女性を動物として捉えているかのような。男は知性的/理知的生き物で、女は感情に動かされる動物的な生き物。そんな“女”に男は影響されたり翻弄されたりもする、というような*1古典的、保守的に感じられるような価値観。茶沢さんも十分しんどい家庭に生きているのに、彼女は住田君を救うためにひたすら仕える役回りのように感じてしまいました*2
地震原発のことが織り込まれているのですが、それがとってつけたようで、劇中で流れる原発事故等のTVニュースが“3.11後の世界”という雰囲気を盛り上げるためのBGMのように感じてしまった。同様に途中に挟まれるエピソードで、通り魔が路上ミュージシャンを襲うところや、バスの中で通り魔的に女性に切りつける男のくだりや、“メスブタ”などの言葉を体中に書かれた下着姿の女がアパートからゴミ捨てに出てくる場面も、とってつけたかのような感じで、“園監督テイスト”な雰囲気づくりのパーツのよう…。あと、個々のエピソードの描き方もぞんざいに感じてしまった。渡辺哲が人殺ししたことに関するエピソードも尻切れトンボだし…。
登場人物についても、住田君に依ってきているホームレスたちって、渡辺哲はともかく吹越さんも神楽坂さんもこの映画に必要かな、と?神楽坂さんは一言もセリフがなく、おっぱいが大きくて着飾って化粧して、いかにもアタマからっぽな女…劇中に出てくる女性キャラの造形はみな薄く感じられたな。あと、窪塚さんとか吉高さんの出番も中途半端*3。“それぞれの命は世界に一つだけの花”説を述べる中学教師の描写も、教師⇒体制側⇒つまんない一般論のうわべだけのお説を講釈するっていう、ステロタイプ。でんでんほか『冷たい〜』の俳優陣が結構出ていて、『冷たい〜』でのキャライメージがちらちらしてノイズを感じたところもあった。また、本当によくわからなかったのが、茶沢さんの母親を演じた黒沢あすか。ただただヒステリックに叫んだりしている奇矯な人物…造形が薄いし、彼女が泣きながら絞首台をつくっているのもただ画的におもしろいから?…同じクズ親でも住田の男親の光石研の描かれ方とその感じが違う。黒沢さんの大仰なセリフ回しもニガテでした*4。そして全体のセリフ。茶沢さんが住田君のことを「君は」から始まるセリフで延々と語ったり、ヴィヨンの詩を読んだり、非日常的セリフを舞台劇のようい会話させ、そこにやたらとクラシック音楽をかぶせる。そうやって、デフォルメや過剰な描写や舞台的な大仰なセリフで幻惑しようとしても、結局は去年の“今年の漢字”と同じ結論かぁ、と感じました。“絆”なり“あらたな家族の再生”こそが希望?そしてラストの「ガンバレ」の大声での掛け合い。それは否定しないけど、ある種あたりまえでありきたりだよね。
…この映画は自分には合わなかったよ、奇矯な描写や過剰なエピソードの積み重ねじゃなく、住田くんや茶沢さんが家でどんなもの食べてどんな生活している、というような、彼らの日常がわかるような描写の積み重ねが自分としては観たかったような気がします。そんなのを観たいと思うくらい主役の二人の演技はよかったよ。
ヒミズ(2011/日本)監督:園子温 出演:染谷将太二階堂ふみ、渡辺哲、光石研ほか
http://himizu.gaga.ne.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18982/index.html

※途中でホームレスの一人が住田くんが不幸に陥ると夢見て、住田さんが大変だぁって叫んで飛び起き、それに同調したみんなが駆けだしたところをみて、こいつは『インモータルズ』のパイドラか、と思わずつっこんでしまった。

*1:ある種のファム・ファタール

*2:自己犠牲をはらってでも住田君を救うことが自分の救済につながる、という設定かな

*3:窪塚さんは村田哲を泥棒に誘うんだけど、その必然性ないような。あの泥棒仕事っぷりならどうみても一人で仕事出来るじゃん…

*4:某女王様キャラの女芸人口調を思い起こす