こんな映画を観られるとは…What a lovely day!『Mad Max:Fury Road』
公開前は、そうまで期待もしていなかった。試写で観る機会をえて、普通のテンションででかけ、体験してしまって以降はふと気づくと脳内をあの色調で支配され、ニュークスやフュリオサ、マックスのイメージがちらつき、火炎放射ギターが脳内でギターをかきならす。家でPCに向かってると、ついJunkie XLのスコアを繰り返し聴き、予告やメイキングをyou tubeで検索しては観てしまう。一般公開されるとIMAXにでかける。そうしたら、また平日仕事しててもあの映画の色調のなかに浮かぶニュークスやフュリオサが(以下略
トゲトゲのヤマアラシ特攻車《BUZZARD EXCAVATOR》に縦横無尽に走りまくるイワオニ族のROCK RIDERS BIKE、そしていかなる状況でもギターをかき鳴らし続ける男の中の男が乗る舞台はDOOF WAGON。巨大砂嵐に巻き込まれる車両とその信じがたい美しさに圧倒され、観ている自分もニュークスにあわせたて叫びたくなる…「What a lovely day!」
沼地にはまる夜の場面の美しさ。武器将軍が目をやられて、包帯でぐるぐる巻きにして、そっからめちゃめちゃに撃ちまくりながら突進する際に鳴り響くヴェルディのレクイエム!
そして人食い男爵の乳首ピアス、そしてすべてのキャラの服装がぴたりとそれしかない、という感じ。マックスとフュリオサの格闘場面。ピストルを手にしたマックスが組み敷いたフュリオサの顔面のそばで連射する場面など、アクションがかっこよくてクール。ニュークスがかわいすぎてたまらない。イモータン・ジョーにいいとこ見せようとして、チェーンがひっかかってこける場面が本当に本当に最高すぎる!アクションや狂った車の爆走の中でも、フュリオサの痛みと怒り、マックスの苦しみ、ニュークスの悲哀、それらはセリフが少なくとも、痛いほど伝わる。
実際にイカれた車を改造しまくってつくりだした実在感。アクションも実際にやってるからこそ、神話的でフィクショナルな世界なのに、ものすごく説得力がある。ディテールの積み上げこそがキモなのだなぁと実感する。そして抑圧された者が権利を取り戻す、人間性を回復するという普遍的な物語がしっかり描かれている。その普遍的物語を彩る狂った車や人間の肉体のディテールがすばらしいから今作は自分の脳内を占拠してるんだと思う。気づいたらまた映画のあの色調に脳内が染められて…(以下略)
たとえば十年後、今作はもうド定番の傑作映画となってるだろう。十年後の若者が観ても面白いし、興奮するだろう。けど、その頃には映画の技術や表現はさらなる進化を遂げているだろうし、『MAD MAX:Fury Road』以後の表現もブラッシュアップされていくだろう*1。未来の若者が観たとき、今作を「名作だけど古い、クラシック」な映画に感じるかもしれないと思うし、そうなるのは世の理だと思う*2。だから自分はいま、この時代にこれを体験できたことにとても興奮しているんだろう。“観る”じゃなく“体験”する、というのがぴったりなんだ。生きていて、歳を重ねて、既知がふえていくなかで、こんなに夢中になって興奮できる体験ができたことがしあわせだな、と思った。あぁ、本当にWhat a lovely movie!ジョージ・ミラー監督に感謝したい気持ちだよ。
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