()日のスパイディ『アメイジング・スパイダーマン2』

アメイジングスパイダーマン2』観てきました。1は、まぁまぁだけど、特に…という感じでしたが、2はデイン・デハーンがグリーン・ゴブリンだというし、それはちょっと観てみたい、くらいのテンションでのぞみました。2D字幕をチョイス。以下ネタバレ有。
1は青春学園モノ的展開のピーターとグウェンの恋愛パートが大きく、全体に軽い感じで、マーク・ウェブとアメコミヒーローものの食い合わせがイマイチのような気がした。それに比べて2は『(500)日のサマー』のマーク・ウェブの持ち味が生かされてるように感じたな。グウェンの亡き父との約束に縛られるピーターは彼女と距離を置こうとする。互いに愛し合っているのにグウェンを失ってしまっていいのか?自分の気持ちに正直に行動しなくていいのか?困難に向き合わないという選択でいいのか、という恋愛軸と、自分の両親がなぜ自分をひとり置き去りにして失踪してしまったのか?という自らの存在の根本に関わるけれど今まで触れてこなかった問題に向き合うトラウマ克服軸、これらふたつの軸がシンクロして今作のピーターを成長させる。困難な問題を引き受けて考え、自らに問いかけ、追い詰めていく…複雑にこんがらがったあたまの中の地図や写真、手掛かりとなる言葉などアウトプットして壁一面を埋め尽くす場面。このシーンは『サマー』でトムが部屋の壁の黒板にその時の自分のアイディアを描いては消し、また新たなものを描いてた印象的な場面が思い起こされたな。恋愛の感情の渦に巻き込まれて何も考えずその衝動に身を任せたい、という思い、自分がここにいる意味、「大いなる力」を得てしまったからには、自らを律さなければ…等々の複雑な気持ちを書く/描くことで整理しようとするわけだ。これら困難を乗り越えようとすることは、成長するために必要な過程ともいえる。あまりにも複雑なこの世界で生き抜くには、避けて通れない問題に向き合い、考え、選択できる自立した大人にならなければならない、そう『(500)日のサマー』のトムもそうだったよね(スケール感は違うかもしれぬけど)。
あと今作のアクションシーンはテンポのいい編集やカメラの動きがよかった。そういえば『サマー』でもテンポよくテンションの落ちない編集が冴えてたな、と思って、これは監督の手腕だな、と。蜘蛛男はごちゃごちゃとした都会の林立するビルの間を飛び回り、重力すら感じさせない自在な動きをする。それゆえヘタすればスパイディがどんな位置でどんなふうに動いているのか捉えがたいんだよね。今作ではそれがすごくすっきり整理され、わかりやすくそのダイナミックな動きが観客に伝わりやすいように描き出され、かつスピード感も失われていない。映画の基本なんだろうけど、動きがちゃんと伝わるように演出するって難しいよね。
そして、今作のポイントは涙目ヴィランデイン・デハーン演じるハリー・オズボーン/グリーン・ゴブリン。こんなに涙目が似合うヴィランがいたでしょうか。デハーンは、そのキャスティングを聞いて期待していたけれど、観てみてさらに「まさに彼のための役」と思いました。父から愛されてなかった、という不幸な生い立ちとその父から遺伝した不治の病を背負う、という何重もの血筋デフォルト涙目要因。グウェンという存在がいるピーターに比べて自分は…という涙目要因。金や地位だけはあるけど、人はその外的要因ににみ引き寄せられるだけなんだ、という諦念というか、深い孤独。孤独ゆえ笑っていても泣いてるみたいな表情を浮かべるハリー・オズボーンはデハーンが纏う寂しさ/生まれ持っての不幸感がマッチしていて、彼のためにアテ書きしたんでしょうか、というくらい。
そういう孤独なヴィランが引き寄せる仲間は結局やっぱり寂しい人であるマックス/エレクトロ。登場してしばらくジェイミー・フォックスだと気付けなかった!すきっ歯で髪の毛寂しくてさみしそうなマックスはルックスからもちょっとヤバそうな雰囲気持ってるなと思ったけど、スパイディが自分の誕生日を祝いに来てくれる設定の一人コントのくだり*1で、完全にヤバい人なんだ、と認識。マックスは「君はこの世界に必要な人だよ」と言ってくれる人がほしかった。偶々出会い頭にスパイディが軽く言った一言は、マックスの心の隙間を埋める欲しくてたまらなかったピースだったために、マックスはスパイディにヤラれてしまって“スパイディとマックスは親友妄想”が派手に展開して、…さみしいひとが何かに過剰に依存することはそれを失ったとき、悲劇的展開につながる。やっぱり孤独は人をおかしくするよ。サマーに振られたトムも完全におかしかったものな。それまで心の支えだったものや自分の自信の源だったものが、すべて反転していってしまう。仕事もなにも意味を見いだせず放り出す。マックスもスパイディへ依存しまくる愛が反転して憎しみの対象となってしまうわけだ。スパイディにフラれた同士であるハリーとマックス=エレクトロが「おまえが必要だ!」「おれが必要なのか?」「お前が必要なんだよ!」と言い合う場面、最高。
ここまで書いてくると、自分は悪役キャラにばかり惹かれてるようで。今作の主役の成長譚を物語の軸にしてその物語を飾る魅力的な悪役が映えるようにしている、という意味でピーターの狂言回し的な要因を強く感じたな。それゆえ主役:ピーターの行動について説明的にならざるをえないところもあって(グウェンの卒業スピーチとか)。ただ、悩みまくっても、ぴたぴたスーツを着ればヒーローとして市民の味方になる。元気づけるために軽さやギャグ、ユーモアもたっぷり、マスクの表側のヒーローの役割をきっちり果たすという自分の役割を自認するという意味で、2のラストでピーターは一皮むけて大人になったともいえる。3では更にピーターにはヴィランに十二分に対抗できるキャラとなってほしいな…でもヴィランが魅力的なものこそアメコミヒーロー映画では傑作であり…そういう意味ではちょっとライトに感じるアンドリュー・ガーフィールドは主役に適役なのかな。
アメイジングスパイダーマン2』(2014)

*1:ココ最高