夜の夢もまこと『風立ちぬ』

江戸川乱歩の有名なことばに「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」っていうのがありますよね。彼が色紙によく書いたりしてた定番のフレーズです。映画『風立ちぬ』のOPを観て、まずそれを思い出した。 映画は次郎少年の夢からはじる。夢の中ではドイツ人…

2013年上半期に観た映画ふりかえりと年間ベスト候補作

上半期はアジアン映画祭というイベントもあり、いい映画をたくさん観られました。とりあえず上半期のふりかえり。 1月 テンションがあがる!というほどの衝撃はないけれど、じわりと印象にのこるものに出会う。私的にはホン・サンスの特集上映がそうでした…

2013年6月に観た映画をふりかえる

もう6月も終了。一年も半分すんだなぁ、という声が出るのですが、仕事の年度的にはまだまだ序盤。はい、きちんと生活しつつ仕事もしつつ、生きていきたいものです。梅雨らしく結構たくさん雨がふった6月のふりかえり。 タイトル 映画館 ひとことメモ 値段 …

すべての人は母から産み落とされている『嘆きのピエタ』

観ました。これは強烈で、でもどこか現実離れしていて、まるで寓話かファンタジーのようでもある。以下ネタバレてます。 眠りながら精を放つ男。布団の中で意識も不分明でまどろんでいる状態が一番の幸福のよう。しあわせは起きてる世界ではなく、眠っている…

2013年5月に観た映画をふりかえる

あぁ、なんだかんだとしている間にもう今年も半分おわり。夜なかなか時間がなくて結局あまり日記も書けていないな。あれこれ映画は観ているのだけど。とりいそぎ、5月のふりかえり。 タイトル 映画館 ひとことメモ 値段 悪魔のいけにえ2 KAVC 爆音映画祭。…

甘くて苦い初恋ノスタルジー『建築学概論』

いかにも韓流ぽいポスターに、「うーんどうだろ」という一抹の不安もあったけれど、これはよかった。どこか『サニー』ぽくもあって。やはりノスタルジーは甘い糖分みたいに人間が本能的に好んでしまう要素なんだな。とりわけモノやアイテムという具体的な「…

血は争えない『イノセント・ガーデン』

完全ネタばれてます。けど、これってネタばれ云々という映画でもないような気がする。 冒頭がラストと呼応するというつくり。冒頭、叔父から贈られたピンヒールの靴を履き、父のベルトを締め、母のブラウスを身にまとい、髪をなびかせて悠然と立つミアちゃん…

カレーの食べ方

今日、帰り道にpodcast聴いてたんですね。なにげなく。それはたまたまカレーについて語られるコラムでありました。そのなかで、カレーの食べ方こだわりについていろいろ語られてるのが楽しくて。 1、カレーの盛り方 ごはんの右にルーを配置するか、左に配置…

初恋の記憶『グッバイ・ファーストラブ』(フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ)

フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ特集上映の一本『グッバイ・ファーストラブ』を観ましたよ。 観終えて、このタイトルどうなんだろ、と思いましたが原題は『un amour de jeunesse』でgoogle先生に英語に訳してもらうと“young love”と出てきた。なるほ…

救いがたいほど成長しない男エイブに救済はあるのか『ダークホース』

見逃していたのですが地元で落穂ひろいできたトッド・ソロンズ監督の『ダークホース』を観てきました。これが素晴らしく作りこまれたダーク・コメディ(ってそんなジャンルあるのか)でした。や、すごかった。 ユダヤ人設定には何か意味があるのかな、このあ…

2013年4月に観た映画をふりかえる

さて4月。仕事的には状況がかわって精神的負担は結構軽減されました。正直ほっとした。ただ、ムリしてきた負担はどこかにシコリのように残ってるから徐々に回復していくよう持っていきたいなと思ってます。 タイトル 映画館 ひとことメモ 値段 ホーリー・モ…

2013年3月に観た映画をふりかえる

3月は更にあたまが仕事に占拠されてきゅうきゅうでした。でも太陽は昇って沈んで一日一日着実に日は経つのだから、と思ってなんとかやってた。それでもこんなにも「早く日々が過ぎればいいのに」と思って生きるのはしんどいな、とつくづく思ったな。だって…

2013年2月に観た映画をふりかえる

ふりかえる2月。このころもあたまの中が仕事のことで占拠されてくるしかった。週末に映画館に足を運んでなんとか思考を仕事以外のことに逃避させていた。 タイトル 映画館 ひとことメモ 値段 アルバート氏の人生 元町映画館 これはよかったよ。フラグたちま…

2013年1月に観た映画をふりかえる

今年3月までは平日は(ときには休日出勤もしてたけど)仕事のことだけでいっぱいいっぱいでした。春になってすこし気持ちに余裕をもてるようになってきたので、ぽつぽつムリせず書いていきます。今年になってから一回も書けてなかった備忘録をまとめてみます…

イマココに生きる若者のお話であり、普遍的な物語でもある『ウィ・アンド・アイ』

ミシェル・ゴンドリー監督の最新作!ということしか知らずに行きました。二つ折りパンフ状のチラシはもらってたけど見てなくて…それが奏功した。これから観る人はぜひとも予備知識無しで観てほしい。 NYブロンクスの高校。さぁ、夏休みという学年の最終日、…

理想を現実にするために『リンカーン』

まずはスピルバーグが映画のバックグラウンドを1分ほど語るところから始まるのに驚いたな。劇中はそこまでアメリカ史の知識のない自分には細かいニュアンスまでキャッチできないもどかしさを感じる箇所はあったし、日本人には馴染みはないけれどアメリカ人…

まばゆい世界『君と歩く世界』

宣伝チラシから予想していたた内容 シャチのトレーナーとして半人前からようやっと一人前になったところであるマリオン・コティヤール。これから仕事もどんどん楽しくなってやりがいに満ちていく…そんな矢先、とある一頭のシャチが野生に目覚めた瞬間、不運…

鮮烈なイメージの塊り『ザ・マスター』

ダメな方じゃないアンダーソンこと、ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作です。催眠的手法で、その人物の過去/ルーツに眠るトラウマを探り、現在の自分は“本当の自分”ではない、本当の自分をたどれば理想的な幸せを手に入れられる…それに気づかせて…

『偽りなき者』

主人公が窮地に陥れられる、というのは映画としては定番です。そんな“落ちる”要素があるから、“上がる”ラストはとてもカタルシスがあるわけし、そのままバッドエンドも一興かもしれませんし、苦い現実味のある後味もいいでしょう。 …それでも自分がとても苦…

飲んだくれカリスマ機長の“かみさま”『フライト』

デンゼル映画。『デンジャラス・ラン』につづき、デンゼルの劇中に映ってる時間:スクリーンのデンゼル占有率の高い映画なのですが、今回のデンゼルは飲んで飲んで酔って酔ってドラッグをキメてキメまくるカリスマ機長。腕は確かだが、プライベートは破たん…

共に生きてきた時間/愛『愛、アムール』

カンヌのパルムドール、また、アカデミー賞の外国語映画賞まで取ったという『愛、アムール』を観ましたよ。 ストーリーは極めてシンプル。とあるアパルトマン、鍵かけられた部屋をこじあける消防隊か警察か…部屋に入ると、臭いに鼻を押さえる―その匂いの元た…

第8回大阪アジアン映画祭:drug war!!『毒戦』

ジョニー・トー監督も今回の上映のためだけに来日した、ということで華々しく開幕した大阪アジアン映画祭オープニングの日本プレミア上映『毒戦』を見ましたよ。 スン・ホンレイ演じる捜査官!ポーカーフェイスで非情なまでにおのれの任務を全うすることにか…

『マーサ、あるいはマーシー・メイ』原題:Martha Marcy May Marlene

マーサは現実社会から逃避した、そして逃避した先からまた逃避した。逃避先で彼女に起こったことはなんだったのか。そして彼女は「原状復帰」できるのだろうか、かつての彼女となにかが決定的に異なる烙印を受けたように見えるのだけど、果たして… 説明セリ…

『世界にひとつのプレイブック』

たとえば、結構な枚数の書類をコピーしようとコピー機に行き、原稿送りのところに原稿をセットする。上から順番に紙が送られていき順調にコピーされていく。が、突然の異音とともに原稿はグシャグシャになり、エラーメッセージ。あぁ、ステープラーで留めた…

高潔さ 『ジャンゴ 繋がれざる者』

全編ジェイミー・フォックスがかっこよく、前半はクリストフ・ヴァルツが、中盤はレオが、後半はサミュエル・L・ジャクソンが持っていった映画。 タランティーノの映画のOPだな、と感じさせる曲、キメ画の連続、タイトルロゴなどに既におなかいっぱい。今…

ちょっとズレてる、おかしな、普通の人『横道世之介』

ネタバレて書きます。横道世之介。よこみちよのすけ。苗字4文字+名前4文字。「よ」の音が何気に韻を踏んでいて、「介」って響きがすこし古臭い、ちょっと印象的な名前。本人は(作品の舞台になった87年当時にはなかった言い回しだろうけど)“あんまり空…

『バチェロレッテ―あの子が結婚するなんて!―』(動揺するキルステン)

キルステン演じるレーガンは完璧なはずだった…のに。ブタちゃんみたいなベッキーがイケメンと結婚とは…!ブライズメイドとして高校のときのBeeグループが集まる。高校の人気者目立つグループだったほかのメンバーは…ケイティはくたびれた洋服売り場の売り子…

彼女の、仕事と人生/人生と仕事『ゼロ・ダーク・サーティ』

この1年は仕事と人生について、ぼんやり考えることが増えたりしたのです。生活に占める仕事の割合がかなりのパーセンテージになってしまい、職場を離れてもなお、仕事のことが延々と脳の一定割合を占めてとどまり続け気掛かりで頭を悩ませたり。お金がない…

金は天下のまわりもの『奪命金』

金は天下のまわりもの、なんだけど、均等に回らないのが困りもの、です。その金のきまぐれな巡り方に翻弄される人らを描く(群像劇までいかないけど)ジョニー・トー監督作は、期待を上回る見応えとおもしろさでした。 投資商品のセールスがまったくノルマ達…

チェックのシャツ+カーディガン男の夢想『ルビー・スパークス』

若くして書いたデビュー作が絶賛をもって世間に迎え入れられるも、それ以後作品が書けなくなっている神経症的非コミュ人間であるのが、ポール・ダノ演じるカルヴィン。人とうまく関われず、世話の焼ける犬(スコッティ)だけがともだち。カルヴィンとは正反…