3D映画よりも前のめりになる『バーレスク』鑑賞体験

あけましておめでとうございます。2011年のはじまり:お正月にふさわしいと思う、華やかな映画について書いてみます。むかしと比して年末年始の“ハレ”感というか非日常な感じが薄まった感があるのですが、仕事が休みに入った12月29日に“ハレ”感満載の映画『バーレスク』を観てちょっと気持ちをあげてきました。
ストーリィは、田舎から大都会へシンガーを夢見てなけなしのお金を持って片道切符でやってきた親兄弟のいないひとりぼっちの女の子(クリスティーナ・アギレラ)が主人公。彼女はひょんなことから歌とダンスの融合したクラシックなショー“バーレスク”を見せるクラブへ足を踏み入れる。たちまちバーレスクショーの魅力にとりつかれた女の子は、店のウエイトレスとして働きはじめ、やがて舞台に立つチャンスを掴む。とあるアクシデントを契機に彼女の実力が花開くのだが、クラブは借金によりその存続が危ういのだった・・・。思わせぶりにカメラを振った先に映ったものにわざわざ字幕をかぶせたり、わざとらしい感じでキーワードをセリフに織り込んだり、いかにものライバルキャラやあやしげな不動産屋の金持ち男など、伏線のためのフラグをあれこれ立てる→ラスト数十分ですべてきれいに回収、という気持ちいいくらい定石を外さない構成です。悪く言えばありきたりとか薄っぺらいのかもしれません。でも、それよりも、この映画は、オールドファションな少女マンガみたいに安心して読めて最後カタルシスを得られるような構成であるべきだと思うのです。なぜならこれは、ストーリーの複雑さよりも、ショーを体感させることがメインの映画なのだから。ミュージカル映画って、歌を聴かせるのが主眼なので、ストーリィがかなりご都合主義だったりしますよね、そんな感じです。
最初のシェールの歌で、さぁショーの始まり、と観客をその世界にいざなう。バーレスクのショーの場面が、様々な曲+ダンスで描かれていく。リップシンク(口パク)でいいんだ、お客もそれを求めてるんだから、というクラシックな方針でリップシンク+ダンスのショーを見せていくなかで、トラブルにより、クリティーナ・アギレラが最初に腹から声を出して生声で歌い始めるシーンの迫力ったらないわー。そして豪華な衣装!歌!ダンス!思わず前のめりになって、スクリーンに見入ってそのショーの世界に浸っているみたいに釘付けになる。正直、アギレラのダンスは頑張ってるけど周りのプロフェッショナルなダンサー陣には劣ると思う、でもセクシーな衣装を着ての立ち姿とソウルフルな歌声でもう十分。魅入られたかのように見入ってしまう(駄じゃれみたいで、すみませんすみません)。曲といいセットといい、ダンス、衣装・・・本当にあんなクラブがあったら、映画内では最初に20ドルって言ってたけど、100ドル払っても全然いいでしょう。
少女マンガか何かの映画かで観たことがあるようなある意味“ベタ”な伏線と展開でストーリィが流れていくなかで一番印象に残ったディテールは、バーテンダーの彼とアギレラが最初に寝るに至るところ。いい感じに酔って帰ってきて、同じベッドに寝るかと思いきや、彼は彼女をカウチに残して寝室へ。で、おやすみ、って言っておきながら何度も扉をあけて、「あー水飲むの忘れた」「あ、次は小腹すいた」みたいに出てくるんですが、そのとき彼は一枚ずつ服脱いでくる。で、最後は全裸にクッキーの箱で下半身を隠して、「君も食べる?」とかっていうスタンツみたいな小芝居があるんですよね。このアメリカンジョークというか、なんともいえな“アメリカン”感にヤラれました。本当にアメリカ人はあんなアメリカン小芝居を日常的にするのか?あのシーンは観ながら半笑いみたいになった。日本映画でやったら、客席に寒風吹きすさぶだろうけど、『バーレスク』に充溢するアメリカンな感じ、非日常感などない交ぜになった“バーレスク世界”ではこれでいい。ラストもハッピーエンドっていえば、まぁそうだけど、本当に大丈夫?など・・・いろいろ気にはなるけど、細かいことはいいんだ、“バーレスク世界”だから。
ちなみにこの映画を観たのは、ミント神戸にあるシネコンの小さめのスクリーンではありましたが、客席は一杯でした。そのほうがショーの目撃者的な雰囲気出るっていうか、『バーレスク』はたくさんの観客とともに観るのが、オススメ!と思われます。

バーレスク』スティーヴン・アンティン:監督、シェール、クリスティーナ・アギレラ主演
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=337503

昨年時点でシェール64歳、アギレラ30歳

その他追記
・シェールはちょっと知性が足りない感じの役でしたね。バーレスクへの情熱はすごいけど「なんかお金とか銀行とか債務とか言われても私よくわからんし、でもクラブは手放したくないし(´;ω;`)ウゥゥ」 みたいな。あと、シェールについては気に入らないヤツの乗った車がぴゅーっと走り去ろうとしたときにすかさず車のトランクを開けて、ゴルフクラブ?的なもので相手の車のガラス叩き割る機敏な動きも印象に残りました。
アギレラが、シェールにメイクしてもらって見違えるようにキレイに、みたいなのも、メガネとったら美少女的な少女マンガ展開を思い出しました。アギレラのナチュラルメークもよかったですよ(映画内設定なみに若くみえた)。