最近映画館で観た旧作2本『太陽を盗んだ男』/午前十時の映画祭『ダーティハリー』

『太陽を盗んだ男』(1979/日本:監督 長谷川和彦)シネ・ヌーヴォ
おもしろい!との評判を見聞きしていたので、大阪のシネヌーヴォでのジュリー&タイガース映画特集で上映されるのを楽しみにしてました。しがない教師(とはいってもジュリーですよ!)が原爆を作っちゃうというトンデモな設定というのは知っていたのですが、そこに至る前のバスジャック〜皇居突撃は知らなかったので、冒頭から括目して見入ってました。しかもあの皇居前広場の場面ゲリラ撮影とか…ありえんでしょう。すごいぞ!バスジャック犯のイカれた演技も最高です。しかもこの大事件(このエピソードだけで映画一本できるんじゃ)を契機に、ジュリーの原爆製作欲求がむくむく湧いてきて、ジュリーが“如何にして心配するのを止めて原爆を愛するようになったか”という物語が展開するわけです。フーセンガムを噛み噛みなんだかもやもやと思いつつも生きてきたジュリーはバスジャック事件をきっかけに、正体不明のもやもやをグチャっとつぶしてやろうとでもいうように、原爆を作って何事かをやってやろう、と決意。東海村原発プルトニウム盗みに行き、アパートの部屋で製作開始。ビニールハウスみたいなのと、ビニールの雨ガッパみたいな装備でプルトニウムをアレコレしてる様子を観て「いくら昔の映画とはいえ、そんな装備では大丈夫じゃないでしょ…」と思ってたら、ちゃんと大丈夫じゃないようになっていくのでした、まぁさすがにアレではムリってのは昔から認知されてたわな…。
原爆を作った後に取るジュリーの行動は有名ですよね。原爆を作ったものの、それを利用してやりたいことや自分が実現したいことなんてなんにもなかったのなー、作ること目的だけで充足して、とにかく原爆というものを愛している自分を発見するわけです。池上季美子演じるラジオDJゼロ*1との不思議な共犯関係、デパートの群衆シーンのすごさ(これもゲリラ撮影とな!)、菅原文太との壮絶すぎて既成概念を超えるカーチェイス(思わず笑ってまうがな・しかもやっぱりゲリラ撮影!)や死闘(まさかの文太ゾンビ化!)を経て、彼は自分の目的を、原爆を抱きかかえて生きること、にシフトする。とにかくいろいろいろいろあって、最後やたらジュリーがかっこいい、という奇跡の映画でした。おもしろかった!

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午前十時の映画祭『ダーティハリー』(1971/アメリカ:監督 ドン・シーゲル)
ハリー・キャラハン刑事が主人公で後にシリーズ化することとなる超有名作。むかしはTVでよくやってて、その時ぼんやり観たなぁくらいの印象だったので今回午前十時の映画祭で観るのを楽しみにしていました。44マグナムを構えたハリーが銃口を相手に向けて、残りの弾丸数を問う有名な場面にはしびれました。あとは結構笑える場面があったのが意外でしたね、相棒とのやりとりとか。緩急がうまいこと配分されているから緊張感のある場面が引き立つ。スコルピオの異常性もたまらなくて、アタマ狂ってんなこいつ、とムカムカしながら観てました。というわけでスコルピオも最高。あと、市長に要求した金の運搬役であるハリーを次の電話ボックスから次の電話ボックスへと移動させ、しかも電話は必ず4コール以内に取らせる、っていうのも当時ならではの設定でスリリングだし、おもしろかったな。いったん捕まったスコルピオは不当逮捕を主張し結局無罪放免。ハリーは覚悟して警察のバッジを剥ぎ取らねばならない行動を取ります。そのラストはかっこよくてしびれるような気持ち良さを感じてしまうところもあるけれど、ハリーの決断の重さとその苦渋を感じ取れるものでした。音楽もファッションも映像もよかった。本当にスクリーンで観られてよかったです。
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上記2本とも当然CGは無い時代ですから、全部人間がやってるし、風景も(一部ペイントもあるけど)本物。ハリーが自殺しようとしている男を止めようとはしご車に乗るところとか、冒頭のビルの上から俯瞰して見下ろすところとか、ヘリでの追跡劇(2作ともにあったなこの場面)、ジュリーの大規模な逃走劇とか、全部本物なんだよな。当たり前だけど、そのことにちょっと感動もしました。当時の技術で出来る限りの力を尽くし、役者陣もすばらしい演技で応えてできあがった結晶は色あせないですね。

*1:観ててイライラする女のパターンでございましたが