『マリー・アントワネットに別れを告げて』

ダイアン・クルーガーがアントワネットで、その朗読係シドニーを演じるのがレア・セドゥです。最近気になるレアちゃんの出演ということで楽しみにしてました。
使用人であるシドニーの目線で語られていくので、ヴェルサイユの裏方が垣間見えるのがいいのですよね。目覚まし時計で飛び起きて、急いで身支度して香水ふって出勤するもちょっと遅刻ちこく〜!という少女マンガみたいなシチュエーションが、ヴェルサイユ宮殿裏方の様子ってのが、いつの時代もかわらんな、と。しかもレアちゃんのメイクしていない感じもいかにも当時っぽくていいのですよね。裾の長いドレスで全速力で走って盛大にこけて汚れちゃって、走って乱れた髪の後れ毛を唾でなでつけて、それらの仕草がイチイチがキュート。素顔でも血色のいいほっぺたがかわいい。それに比して、アントワネットとか貴族連中は白く塗ったりしているのですよね。いかにも当時のやわやわした貴族っぽい。
あれだけの宮殿や貴族の出入りもおおいところで裏方がそれはたくさんいたはずで、裏方の側からの視点でバスティーユ襲撃あたりからの追い詰められていく貴族や取り巻き、そしてアントワネットらの様子を描くのが新鮮。女王に恋し、崇拝しているシドニーだけれども、身分も世界も全く異なる女王の気持ちが別の人に向けられていることはしようがないと思うし、あきらめている。当然、身分が全然ちがうのだから。でも、その別の人=ポリニャック夫人*1が国外に逃げるのに、夫人を危険にさらさないため、夫人の身代わりとなるよう命じられて、気力もなにもかも萎えてしまう。でも、シドニーは、自分の存在意義は女王あってこそのものだから、とすべてを受け入れてあきらめて身代わりとなり、命を危険にさらすことも承知する。いや、シドニーは女王の頼みに否ということはできないのだからね。はじめて身にまとう貴族の豪華なドレス=女王がポリニャック婦人が身に着けているのを見て、ほめそやしたドレスを身にまとう悲しみと運命を受け入れるあきらめた様子のうつくしさ。気力も萎え、なされるがまま、使用人の服を剥ぎ取られ、胸があられになっても隠す気力もないシドニーのかなしく物憂げな表情…レアちゃんはやはり要注目女優です。個性的でとても好きだな。
貴族の周囲に群がる、何者かよくわからぬ寄生する者ら、有象無象な感じ。美術やインテリア。豪華な貴族の部屋と質素きわまりない使用人のワンルーム。粗末な部屋に住んでいるのに、朗読係ゆえに貸し与えられた当時とても高価であったろう目ざまし時計を大事にしているさま。女性同士の百合的な交流や憧憬や愛情。刺繍の持つ意味…イチイチがロマンティックで良かったですよ。
マリー・アントワネットに別れを告げて』(2012/フランス=スペイン)監督:ブノワ・ジャコ 出演:レア・セドゥ、ダイアン・クルーガーヴィルジニー・ルドワイヤン
http://myqueen.gaga.ne.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD22643/index.html

*1:演じるヴィルジニーは34歳。もっと若く見えた