『桃さんのしあわせ』

遅れて地元で公開されたので観に行ってきました。
アンディ・ラウ演じる映画プロデューサー、ロジャー。多忙を極める彼が家に帰ると、彼の好物をジャストなタイミングで給仕していくお手伝いさんがいる。彼女の名は桃さん。市場で丹念すぎるほどに品定めるする彼女をお店の人がからかったりするくらい、マジメ。人生のほとんどをお手伝いとしてすごしてきた。そんな彼女はかわいがっているネコ、カカがいて、ロジャーの家をハウスキーピングして日々を暮せればしあわせ。日々、家事をして、ロジャーの留守を守り、ロジャーの帰りを待ち、カカとたわむれる日々を生きる。そんな彼女がある日脳卒中で倒れてしまい、生活は一変する。
説明セリフはほとんどない。独り言での状況説明もない。それでも、断片でおおむね伝われば、という作り。好みの問題かもしれないけど、自分は好きでした。映画プロデューサーという職業柄、ツイ・ハークやサモ=ハンら豪華映画人らがゲスト的に出演するのもたのしいし嬉しい。
予告で何度も観ていた、アンディ・ラウが桃さんの手を握って、夜道をほろほろと歩く後姿にじんわり心があたたまる。
邦題もこれでいいな、という感じがした。彼女は自分自身結婚することもなく、ひとりお手伝いさんとしての人生を歩んだわけだけど、それは不幸な人生ではなくて。雇い主である家族と桃さんとの間に、信頼関係などが築かれているからだよね。それは、老人ホームにいる桃さんをロジャーの母(つまり雇い主)がツバメの巣という高級な贈り物を持ってあらわれるところかわもわかる。それは高いものをプレゼントするほどの関係性、ってことではなくて、せっかく持ってきてくれたツバメの巣の味付けにシビアな意見をズバリという桃さんの意見を、雇い主側の女主人が「あら」という表情をしながらも、受け止められる関係性だ、ってことでね。
老人ホームの人らもいいキャラ(あまりに説明がなさすぎ、というところもあって気になったけど)だったな。あと、悪徳ぽいけど憎めない老人ホーム経営者*1アンソニー・ウォンはピタリとはまり役でありました。
自分も桃さんのように生きられればいいのにな。もしくはロジャーのように。両者とも見返りを求めず、人に尽くしているのよな。それは、たやすくはないことですよな。
『桃さんのしあわせ』(2011/中国=香港) 監督:アン・ホイ 出演:ディニー・イップ、アンディ・ラウ、 チン・ハイルー、 チョン・プイ
http://www.taosan.net/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD22174/index.html

*1:かつて映画業界にいた俳優っぽい